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元々、そんなに食べる方ではないが
今日は特に食べる気がしなかった

ずっとシーツにくるまり
ただぼーっとしている
いつのまにか明かりをつけないと
いけないくらい部屋は暗い

こんなに暗くなっているのに
帰って来ないということは
今日はもう戻ってこないだろう
いつも様子を見に来るキラーも
今日は来ていない

背を向けていた窓に目を向ける

しばらく外の空気を吸っていない
すぐに戻ればいい

頭の中で悪魔が囁く

「少しだけ、」

窓を押してみるとやはり開く

鳥に姿を変えて窓から飛び出す
外を飛ぶのは初めてだ
部屋で飛ぶように翼を動かしながら
外へと飛び出すと
歩くことと同じように
自然に飛ぶことができた

風をきるように飛んでいると
本当は鳥だったのかもしれないと思うほどに
気持ちが良かった

少し飛んでいると街が見え
船で見た事のある顔がチラチラといる
キッドもいるのだろう

木の枝にそっととまり
人間の姿に戻り街を見ていると
店から出てくるキッドと女を見つけた

ドクンと心臓がなる
綺麗な女の人がキッドの腕に絡まり
笑顔を向けている

女人を見ることはないかま
キッドはそれを振り払うことませずにいた

(やっぱり女の人)

自分を島へと降ろさない理由は
やっぱり女の人といたいからだ
そして自分をずっと船に乗らしているのは
航海をしている時に抱く女がいないから

目の前が暗くなってくる
ふともう1度キッドを見ると
こちらをじっと見ていて
目があった気がした

ここは見えないはずなのに
体が動かない

キッドが女の人に服を引っ張られ
目がそれた瞬間張り詰めていた
空気がやわらぐ

その隙にすぐに鳥へと戻り
木から飛び降りた


どうやって戻ったかなんて
覚えてないが
戻ってくるのはやはりキッドの船

結局は他に行く場所なんてないのだ


キッドとの行為も自分だけ見てくれて
必要とされているという感じがしていた
でも船を出れば女の人などいっぱいいる
自分1人が特別じゃない

本当に自分は何もない



◇◇◇◇

跨り腰振りながら喘ぐ女を見る

道で視線を感じたことが
気になり何も感じない

甘ったるい声、匂いに
胸焼けをおこしそうだ

黒い髪だけが同じで
誘いにのってみたが
アリアとはやはり違う

「萎えた、出てけ」

上からどかすと

「な、なによそれ!」

キーキーと喚く女に
嫌気がさして枕元の置いてある
銃を突きつける

「まだ死にたくねェなら出てけ」

ヒッと小さい悲鳴をもらし
服を掻き集め出ていく女は滑稽だ

シャワーで女の臭いを流し
視線を感じた場所に戻ってみるが
もう何もなかった
あるのこの島だけで育つ木だけだ

もうこれ以上考えるのもめんどくさくなり

船へと向かった



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