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嬌声の合間にキッド、キッドと
呼ぶ声は掠れていてる
腕を拘束されたまま
仰向けで揺さぶられ
抵抗もしない自分は
人形にでもなったのかさえ思う


揺さぶれる度に背中にくい込むベルトの痛みも
無理矢理与えられる絶頂も
自分が人形ではないことの証明だ

「ん、ぁっ、あぁっ」

果てても抜かずに硬さを取り戻す雄
もう無理だと懇願したのは
随分前な気がする
無論、聞き入れてもらえるわけもなく
行為はずっと続いてた

「他の男を誘ってどうしたかったんだ?
淫乱なテメェにはこんなもんじゃ
足りねェだろうな」

最奥を突かれながら
問いかけられ違うと答えたいのに
口からは出るのは嬌声だけ

何度目かの射精を終え
ゆっくりと雄を引き抜いた

やっと引き抜かれた事に安堵する

情事中は意識を飛ばす事を
許さないキッドに
何度も現実へと引き戻されていた

シャワーを浴びに行く気力もなく
そのまま横たわっていると
拘束されていた腕が解かれた

「おい、何寝てんだ」

少し怒りを含んだ声色に
眠かけていた脳が起きる
弁解する暇もなく
馬乗りになるキッドを見上げると
その手には小さなナイフが握られていた

殴られたりすることはあったが
刃物を持ち出されたことはなかった
やっぱりあたしが誘ったと
思われているのかもしれい

「あの男の血を浴びてたな」

「えっ・・・?」

そう言うとキッドは自分の腕に
ナイフをあて傷を付けた
滴る血に顔色も変えず
その血をあたしの身体へと垂らす
血の臭いが鼻を掠める

「キッド、何してっんんっ」

血のついた腕を口に押し付けられ
嫌でも血が口に入ってくる

「やめ、って・・・」

「他の奴のもんがついたんだ
俺のものをつけるのが当たり前だ」

ピリッと腕に痛みが走る
もしかしてと思い痛んだ腕を見ると
血が滲んでいる

そこでようやくキッドは
ナイフを床へ放り投げた

血が出ている場所
キッドは左腕で
あたしは右腕だった

キッドはその傷をえぐるように
舌先で舐められ痛みに眉を寄せるが
感じてるのが痛みだけじゃない事に気がつく

「テメェが他の奴に汚されるのは
気が食わねェ
汚していいのは俺だけだ」

お腹から降りたキッドに
脚を大きく広げられる

「切られたっつーのに
濡れてヒクついてんじゃねーかよ」

ククっと笑い一気に貫かれる

逃げることは許さないというように
手を繋がれ最奥をズンズンと
雄が入ってくる

腕の大きさも違うのに
傷口は測ったようにピタリと同じ場所にある
鏡を見ているような不思議な感覚だ

求められるままにキスに応じ
自分もキスを求めた

キッドはきっとおかしい

それに痛みだけじゃなく
悦びを感じてしまった自分も
きっとどこか壊れてきているのかもしれない



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