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「アリア」

その声に目を向ければ
いつの間にかキッドとキラーが
側に立っている
男は床に倒れている
死んではいないようで唸っている
窓に映った自分を見れば
自分の口元や手には男の血がついていてる

「アリア、何があった」

キッドの怒気を含んだ低い声
その声に反応した男が
残っている力を振り絞ったかのように
キッドのズボンを掴む

「頭、コイツが誘ってきたんだ!
なのに!」

キッドはその男の手を
もう片方の足で踏みつけた

「・・・キラーこいつを連れてけ」

「わかった」

男の首根っこを掴み
引きずっていく

「頭!」

懇願するように呼びかけられても
そちらを振り向く事もなかった

「アリア」

名前を呼ばれ体がビクリとする

「...ゆっくりシャワー浴びてこい」

キッドの言葉に頷いて
浴室へと向かう

体についた血が流れていくのを
ぼうっとした頭で見る

鳥になった自分は男の顔面や
体を無我夢中で嘴でつついた

それしか覚えていない
それでもあれだけ男に
傷を負わせたのは自分だ

身の危険を感じたとは言え
自分にもこんな暴力的な一面があったのかと
心にズンっと重たいものが
のしかかっているようだ


『頭!コイツが誘ってきたんだ!』


その言葉を思い出す
自分はそんな事していない
寝ていた部屋に入ってきたのはあの男だ

自分が違うといっても
最近出会った女より
ずっと一緒にいるクルーを
信じるかもしれない

そうしたら自分はどうなるんだろうか
捨てられるのか
それとも殺されるのか

どんどん気持ちが沈んでいった

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