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朝、あたしが起きる頃には
キッドはもう起きていて
隣にはいなかった

夜中の出来事が嘘のように
素っ気ない態度は相変わらずで
やっぱりあれは夢だったのかもしれない

何日か過ぎて島へと着く
案の定あたしは留守番

新しい島にいきたいけれど
前の島の事があるから
大人しくしておく事にした

幸い本はいっぱいあるし
時間を持て余すこともないだろう

少し食事をとりながら
本を読むことに没頭する
本の文字が見えずらくなったことで
外が暗くなっていた事に気がついた

シャワーで体を綺麗にして
もう寝ようとベットへ入る

カチリという鍵の開く音で
少し目が覚める
キッドが帰ってきたのか
そのままシーツにくるまっていると
近付いてくる気配がする

ただその気配はキッドではない
見えないけれど感覚でわかる
寝ぼけていた頭が覚醒する

「だ、れ?」

起きたあたしに気が付き
チッと舌打ちをして
近付いて来た人影に
押し倒される


「頭に可愛がられてんだ
クルーの俺にも抱かしてくれよ
白い肌が、堪らねェ
触り心地も抜群だ。
頭が夢中になるはずだぜ」

ヒヒッと下品な笑いで
服の中に手を滑り込まし
乱暴に乳房をもまれる

触られてることに
頭が追いつかず
反応が遅れる

「やめ、て!!」

力いっぱいに
相手の頬をたたく
自分の手もジンジンと痛む

「そんなんじゃちっとも痛くねえさ」

服を捲り上げられ露わになった胸、体に
息を荒くしながら触る
ただ触られているだけなのに
それが嫌で嫌で仕方がなかった

怖い、気持ち悪い

胸の先端を痛いほどこねくり回され
苦痛で顔を歪める
やめて、いやだと叫べば叫ぶほど男は喜ぶ

「その顔もたまんねェ」

触ることに没頭していたが飽きたのか
ふいに触るのを止めたかと思うと
今度は舐めようと顔が近付いてきた

その瞬間に身体を変化させ
鳥にかわると

「お前能力者か」

と舌打ちをする

戻れ、と脅されても
絶対に戻ってやるものかと睨みつける

伸びてきた手を嘴でつつく
少しつついただけなのに
男の手に穴があいたように血が滲む

その事は自分自身も驚いたし
男も驚いていた

「頭に性処理に使われてるだけの
女のくせに生意気な奴め」

驚きはすぐに怒りに変わる
暗い部屋の中頼りは月の明かりだけだ
相手の顔は影で見えないが
怒っている気配だけはわかった


この気配はよく知っている
母親にも売られた店の男にも
散々殴られてきたからわかる

次に何をされるのかも

それでも今は何も
出来ないただの子どもではない
鳥のまま男をギッと睨みつける

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