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「おい、起きろ」

足で揺らしても起きないアリアに
乱暴にローブをかけて抱き上げる

「ん・・・」

腕の中で寝返りのように
ピタリと寄り添ってきたアリアに
歩こうとしたが思わず固まってしまう
寝惚けているだけだとわかっているのに
コイツは俺に無理矢理抱かれて
強制的に名まで彫られた
恨まれても好意を持たれることなどない
好意を持たれないならいっそのこと
俺の事した考えれないように
恨まれてもいいとさえ思う

チッと小さく舌打ちをして
カーテンを開けると
まだクルー達は騒いでいた

「キラー先に帰る」

「あァ、わかった」

店主は深々と頭を下げ扉を開ける
金を払えば海賊でも何でもいいのだろう

夜風は涼しく
酒の入った体には心地が良い

「キッ、ド・・・」

アリアが俺の名前を呟く
俺の夢でも見ているのかと
口角が上がる

「・・・アリア」

何気なく名前を呼んでみると
少し微笑みまた眠る

ただこれだけなのに
敵を倒し宝を手に入れた時とは違う
高揚感が湧き上がる


「こんな夜に何してるッポー」

聞いた事がある声に振り返ると
肩に鳩を乗せたガレーラの職人の
ルッチが立っていた

「あ?テメェに関係ないだろ」

「この島の秩序を乱す輩は容赦しないッポー」

「ふん、残念だな
そんな事してねェ俺に用はねェだろ」

「名前を書いたのかッポー
お前の独占欲は凄いッポー」

こんな時にも腹話術で喋る男に少し苛立つ

「それこそテメェに関係ねェ
コイツは俺のモンだ。
どうしようと勝手だろうが」

話をするのも煩わしい
これ以上話すこともないと
背を向け歩き出す

海賊を挑発するような態度がとれるのも
それだけの実力があるからのだろうし
普段ならぶっ殺してやりてェが
何故か今は買う気にもならなかった



それはアリアが腕の中にいるからだとは
まだ気が付かない



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