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手がドレスの肩紐にかかる

「だめっ」

キッドの膝から飛び降り女の手を押さえる

「キッド、なんでこんなことするの?」

何も言わず愉しそうに
口角を上げているキッド

「・・・貴女お頭さんの女気取りなわけ?
助けたつもり?それともとられたくないだけ?
別に脱げるわ!」

予想外の女の言葉に吃驚して
押さえていた手を離すと
肩紐を落としドレスを脱ぐ
下着姿になった女
豊満な胸に細い腰

「脱いだわ」

「まだだろ?
下着で興奮しろってか?」

余裕の笑みでキッドを見据える女に
嘲笑うかのように告げると
女の顔から笑顔が消えた

「できねェなら失せろ」

冷たく言い放つと女は少し戸惑いながらも
下着に手をかける

「ぬ、脱げるわ」

下着を脱ぐ女を止めることも出来ずに
ただ呆然と立ち尽くす事しかできない
下着を脱ぐという状況に周りも気が付き始め
ヒューヒューと口笛や野次が飛び交う

女は脱ぎ終わると堂々と体をキッドに向けた

「ふふ、これでどう?」

「あァ」

キッド立ち上がると女に近付いて行く
何故だか自分の心臓がうるさい
焦っているような感情が
自分の事なのに理解ができなかった

女はキスを求めるかのように
キッドの首に手を回そうと
手を伸ばすがキッドがその手をとり
ひねり上げるように女の手を掴むと
こちらを見ている人達に見せるように
女の裸を晒す

「きゃあっっ!お頭さん何?!」

「この女を抱いてやれ」

近くにいた船員に投げつけるように
女を渡した

「え!いいんですか?!
ありがとうございます!」

「ちょっと!私はお頭さんにっ」

「俺が抱くとは言ってねェ。
金ならやるよ。
金を渡せば文句ねェんだろ?」

この店の店主に確認を取るように
札束を取り出し顔を向けると
その金を見て店主は
早く受け取りたいという顔で
何度も頷いていた

女は屈辱に歪む顔でキッドを睨みつける

「おい、その女は酷く扱われるのが好きらしい。
死なない程度に激しくしてやれよ」

女を店の2階に連れて行こうとする
船員に声をかける

「強気の女を弱らすの好きなんで」

下品に笑う船員に女の顔も青ざめて
震えながらも連れていかれていた

その様子に男達はより一層盛り上がり
女達は憐れみ目で見ていた

そして何事もなかったかのように
再開される宴会

女は大丈夫なのだろうか

それでもキッドではない
男に連れて行かれたことに
安堵している自分に気がつき
なんとも言えない気持ちが
グズグズと胸に広がる

「何考えてんだ」

何も喋らないあたしを訝しげに見て
眉を潜める

「な、なにも」

「あんな女の事も何も気にするこたねェぞ
あれはアイツが望んだ事だ」

「・・・そう」

「テメェは俺の事だけ考えてりゃいい」

そう言って胸に刻まれている
キッドの名前をそっと撫でた
もう肌に馴染みずっとそこにあったかのように
主張する刺青に触れてみると
ほかの肌とは違い少しだけ感触が違った

「どこにも行けねェなァ?
手配書に載るのも時間の問題かもな。
お前は死ぬまで俺が飼ってやるよ」

キャプテンの名前に海賊旗の刺青
どう見ても一般人には見えないだろう
逃げようにもどこにも行く宛などない

どんどん身動きがとれない沼へと
体が沈んで行くような気がした

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