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眠れずにシーツにくるまっていると
人が入ってくる気配がした
もう日付も変わった頃だろう

そのまま動かずにいると
ベッドに近づいてきて
反対側に座った

そっと目を明けると
やはりキッドで
お酒と香水の香りがする

キッドは服を脱ぎ
そのままベッドに入ってきたので
慌てて目を閉じた

身体を引っ張られたかと思うと
腕の中へ閉じ込められる

無理矢理抱かれキッドが
憎いはずなのに
ここから離れらず
未だにここにいる

それに香水の匂いを不快に感じるのは何故か

キッドが他の女性を抱くなら
自分の負担が軽くなるから
喜ばしいことのはずなのに


答えが出ない自問自答をしていると
いつの間にか眠ってしまった



不自然な揺れで目が覚める
目を開けるとキッドに抱えられていた
動かない身体を見るために目を動かすと
シーツに赤子のように包まれていた

「キッド・・・?」

「・・・チッ」

目が合うと舌打ちをされる
きっと目を覚ましてほしくなかったらしい

「どこ、いくの?」

「うるせェ。黙ってろ」

それ以上は口をきくなと言わんばかりに
吐き捨てられて口を噤む

黙っていると止まる
どこかの店に入っていく


「いらっしゃい」

女の人の声
女性の声にビクリとする
ここはどこなのか
あたしは売られるのだろうか

「昨日の件はコイツだ」

そっと顔を覗かれた
女性は色んなところに
刺青をいれている
一見怖そうなのに
柔らかく微笑む
その顔に少し安堵する

「あら、可愛い!」

「あんまりジロジロ見んじゃねェよ」

「ほほ、ごめんなさいね」

楽しそうに笑う女性は
少しも悪びれた様子もなく謝罪をする

「アリアちゃんをそこに寝かせて」

何故あたしの名前を知っているのか
昨日の件とは何なのか
近くにあったベッドに寝かされシーツを取られる
裸だと思い身体が固まるが下着はつけていた
キッドが履かせてくれたらしい

「ふふ、真っ白で綺麗な肌ね
私は彫師のミリヤよ」

彫師・・・?

『ココに俺のキッド海賊団の
シンボルでも彫るか?
そうすれば嫌でも誰のもんかわかるからな』

その言葉を思い出しハッとしてキッドを見ると
ニヤリと笑った

キッド海賊団のシンボルでも彫られるのか
手が震える

「キッド、この子怖がってるわ
本当に同意の上なの?」

「あァ、だよなァ?アリア」

その問いかけに
震える手を握りしめ
小さく頷く

「んーわかったわ。
えっと胸だったかしら?」

「見える位置にな、あと太股の内側もだ」

「ふふ、独占欲が強いのね」

呆れたように笑うミリヤを無視して
じっとあたしだけを見つめていた

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