誰かに汲み取ってほしいだけ
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「アリア、こっち来いよ。
もう寝ようぜ。
発情期明けで疲れただろ?」

「んー大丈夫」

夕食も終わり
エースの部屋で窓辺の椅子に座り本を読む
この世界の事を知って欲しくて
海のことや生物の本を読むのが日課だ

「オレが大丈夫じゃねェ」

「あっ!」

本を取り上げられ
荷物のように肩に担がれ
ベッドへと降ろされる

「なァ、マルコの事どう思ってたんだ?
今日マルコと何話したん?」

「どう、したの?」

いつものふざけた雰囲気ではなくて
真剣な目で押し倒される
唇を重ねられる

「マルコが好きなのか?」

その問いかけにハッとする
喉が乾いていく気がした

「わからない、好きとかわからないの」

やっと口から出た言葉
あたしは人を好きになった事がなかった
運命の番は相思相愛だと言われているが
マルコさんに対する気持ちが
恋なのかと言われるとわからない
Ωであることが嫌で勉強もして
αに負けたくないと足掻いていたのに
運命の番が現れたらΩの性を受け入れかけていた
自分に嫌気がさす

マルコさんの事をなにも知らないし
向こうもあたしの事を何も知らないのに
惹かれ合う運命なんて馬鹿げているのかもしれない


「マルコにもアリアを渡したくねェ」

力強く抱きしめられると
胸がキュっと切なく締め付けられる

「エース、」

「アリアの事が知りたい」

抱きしめれていた力が離れていき
顔を見つめられる

「え?」

「アリアの今までが知りたい」

意外な言葉を口にされ
少し吃驚してエースを見た



その夜はベッドの中で
お互いの昔話をした
あたしの生い立ちも
ここの世界に来るまでの話
話している間エースは優しく手を握ってくれる

エースからは
弟の話、山での生活の思い出
・・・出生の話も
苦しそうに話すエースの頬を撫でる

「エース、あたしは
エースに出会えて救われたし
助かってるからそんな顔をしないで」

「オレもアリア出会えて
よかったと思ってるから
お前も悲しそうにするな」

お互いの傷を舐め合うように
自然と抱きしめあった



マルコさんの顔が頭に浮かんでは消える


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