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夜も深くなっていく
まだまだ宴は終わりそうになく
キッドは周りと話ながら
お酒を飲んでいる
お腹もいっぱいになり
誰とも喋らないので
することもなくぼーっと夜空を見上げた
なんの遮りもない中で
空を見上げるのは初めてで
空一面に広がる星はとても綺麗だった

「夜空がそんなに珍しいか?」

いきなり頭の上から声が降ってくる

「・・・こんなに広い所で見たのは初めて」

「ふん、お前が逃げねェってわかったら
窓ぐらい開けてやるよ」

「本当?!」

「あァ」

「ふふ、楽しみ!約束ね!」
空からキッドに視線をうつすと
少し訝しげに見られていることに気がつく
少しはしゃいでしまったかもしれない

「ごめんなさい・・・」

消えそうな声で謝ると
ふんと鼻をならしそっぽを向かれてしまった

(怒ってないといいけど・・・)

もう宴が終わるまで静かにしておこうと心に決めた




(コイツは何なんだ?)

あんだけ酷い目に合わせているのに
時々笑顔を見せるのが不思議でならなかった

普通なら泣いて暴れるだろうし
街につれて行った時に逃げ出すはずだ

コイツは何故か受け入れている
今まで過ごしてきた環境が
そうさせているのかもしれないが
こっちからしたら拘束する手間が省けて楽だ

アリアは逃げない
そんな考えが本当は頭の片隅にある

大人しくなったアリアが
俺に寄りかかってきた
寝ているらしい

「俺は戻る。
W7には明後日には着くだろ
それまでは食事も部屋に運べ」

「わかった」

アリアを抱きかかえ
部屋に戻っていった

その後ろ姿を微笑ましく見守る船員と
ため息混じりに見つめるキラーがいた

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