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部屋に戻され
自由にしとけと言い渡された

キッドは船長だから何かと忙しいのかもしれない

体を鳥に変えて見る
少しずつではあるが練習していると
変身していられる時間も増えてきていた

ソファーの背もたれの所に乗っかり
羽を広げて動かして飛び降りて見ると
最初から飛べていたかのように
飛び立つことができた

部屋の隅から隅までを何回か行き来し
飛べる事に自信が持てた

飛んでいると急に開くドア
ノックもなく開くということはキッドだろう

人に戻ろうと思った時には遅くキッドに
鳥になり飛んでいる所を見られてしまった

少し驚いたような顔をしたがすぐに顔をそらし
そのままソファーにどかりと座る

ソファーの近くの床に降り
元の姿に戻る
怒られるんじゃないかと
震える手でスカートを握る

「こい」

「はい・・・」

恐る恐るソファーに座る
キッドのの目前に立つ

「お前すぐに鳥になれんのか?」

「・・・うん」

「じゃぁもし船の外で
俺らとはぐれて捕まりそうになったら
鳥になって飛べよ」

「え?」

「そのまま空から俺を見つけろ
逃げようと思うなよ?
どんな手を使っても見つけ出す。
もし見つけたら今より酷い目に合わすからな」

鳥になって上からキッドを見つける?
考え込み黙るあたしに苛立ったのか
ガンッと机を蹴る

「すぐに返事しろ!」

「ごめ、んなさい・・・
わかった。
キッドとはぐれたら
どんな人からも逃げて
キッドを見つける・・・」

ふんっと鼻を鳴らし
飼い鳥だとわかるように
首輪つけなきゃなといいながら
持ってきた食事を食べる

怒られなかったことにほっとして
スカートを握る力が抜ける

「とっとと座って食え」

まだ立っているあたしを睨みつける
すぐにキッドの横に座り食事をとった


食事を終えしばらくすると
ノックが聞こえてきた

「頭ァ食器下げに来ました」

ドアの向こうからする声に
無言で食器を持ち
少しだけドアを開け渡していた

食器を渡し戻ってきたキッドは
ベットへと移動する

「・・・こっちこいよ。
昼寝するぞ」

その言葉にピクリと身体が強ばるが
機嫌を損ねてはいけないと
足早にベットへと向かい
シーツの中に潜り込むと
グイッとキッドの方へと引っ張られた

「アイツらがお前の歓迎の宴をしたいんだとよ
今のうちに寝とけ」

「宴・・・」

「酒は飲むなよ」

「うん」

いっぱい寝たはずなのに
キッドの温もりでウトウトと
まどろみ瞼がどんどんと閉じていった

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