みっともないと笑ってくれ
::


「失礼します」

こちらに目を向けずに手元の資料に
読んでいるマルコさん
どこに提出するものを置けばいいか
分かっているのなら
すぐに退室できるのだが
初めての事なのでどうしたらいいか分からず

恐る恐る声をかける

「マルコさんすみません。
エースの報告書持ってきました。
どこに置いといたらいいですか・・・?」

その言葉にやっと顔を上げこちらを見る

「あぁ、悪いねぃ」

ぐっと背伸びをし立ち上がろうとするマルコさんに

距離はそんなにないとはいえ
わざわざ取りに来てもらうこともない
慌てて駆け寄り手に持っていた報告書を渡す

「ありがとよい
エースのヤツは何してんだ?」

「あ、ナースの方が部屋に来られたので
あたしが提出にきました。」

「それなら休憩に付き合ってくれよい
そろそろ休憩しようと思ってたからねい
クッキーならあるよい」

差し出された椅子に座り
出されたお茶とクッキーを口にする
ほんのりと甘いクッキーは
今まで食べたクッキーの中で1番美味しかった

「美味しいです!」

「そりゃよかったよい」

そういったマルコさんはふわりと笑う
睨まれた記憶しかなかったが
その笑みが胸をくすぐる

「なぁ」

「はい!」

「お前はエースのことどう思ってんだよい」

「エース、ですか?」

今日昼間にエースの髪の毛を撫で笑う
マルコさんの姿を思い出した
その時に気がついた

「エースは助けてくれていて
お互いに好きとかじゃないです!!
マルコさん!信じて下さい!!」

勢いよく立ち上がりマルコさんに
向かって頭を下げる

「な、いきなりなんだよい」

顔を上げると困惑した表情のマルコさんに
それ以上言わせないようにと口を開いた

「大丈夫です!誰にもいいません!
あたしの世界では普通の事なので・・・
ここではおかしいのでしょう?」

「は?」

マルコさんはエースが好きなだろう

「マルコさん・・・
エースの事が好きなんですよね・・・?
それなのに、あたし、」

男性同士の恋愛をしても
子どもが出来ることのない世界
親父さまが教えてくれた

「ちょっと待てよい!
オレがエースを好きだって?」

「・・・嫌いなんですか?」

「いや、好きだけどよい!
お前が思ってる好きとは
少し違うと思うよい!」

「え?」

「家族としては好きだが
オレは男を好きになったことはないねい」

「・・・す、すみません!!
また失礼な勘違いを……」

「別にいいよい。
いつまでも突っ立ってないで座れよい」

盛大な勘違いをして突っ走ってしまったことに
恥ずかしさでマルコさんを見れないし心臓が煩い

気を使ってくれているのか
この船の事や親父さまの話をしてくれた

突然現れたあたしに警戒しながらも
打ち解けようとしてくれているのが伝わる
海賊というものに怖いイメージがあったのに
この船の人達は親切で
陽気な人達が多いようにおもう
エースとあたしのことももう聞いてこなかった

「アリアの世界では
男同士の夫婦ってのは結構いるのかい?」

「そうですね・・・あ、女同士もいますよ」

「女同士でも?妊娠できるのかよい」

それは身体の仕組み的にってことだろうか?
あたしの世界ではできる

「できます。どちらも母親って方も
いらっしゃいました。」

「そんな世界は想像つかないねい・・・
ここじゃ赤ん坊産むなら男と女じゃないと
できないからねい。
じゃ、お前は女も好きになれんのかよい?」

顎に手を当て考え込む
そんな事考えたこともなかっ

「どうでしょう・・・
あたしは恋人にしたいという気持ちで
人を好きになった事がないので
わからないですけど
素敵な方なら好きになるかもしれないですね」

ふぅんと興味深そうに見られている事に気が付き
なんだか恥ずかしくなる

「あの、ごちそうさまでした!
そろそろ戻ります!」

食べていたものを片付けようとすると
俺がやると腕を引っ張られ
突然の事で体に力が入らず
椅子に座ったままのマルコさんの方へと
なだれ込むようにと倒れる

目の前にはマルコさんの顔
触れている唇

そこから熱がジワジワと広がっていく
急いで離れようとするが
急にがしりと頭を掴まれ
そのままキスをする

「ん、ぅっ、は」

息継ぎもできないくらいの深いキス
キスは挨拶だなんていうエースを思い出すが
これも挨拶なのか

このままもっと触れてほしい

発情期の時のような感情が
トロトロと理性を溶かしていく
ギリギリの所で理性を保ち
ドンッとマルコさんの体を押し返した

「すみません。
あたし挨拶になれてなくてっ
し、失礼します!!!!」

「おい!!」


勢いよく部屋を出て熱い体を鎮めるように
エースの部屋へと走った





はぁーと溜息を吐き出し
やっちまったと自己嫌悪
キスなんて初めてなんかじゃないのに
アリアの唇に触れてしまうと
理性がぶっ飛んだようになってしまった

「挨拶ってなんだよい・・・」

エースの奴が何か吹き込んだのだろうが
もうそんな事はどうでもいい

アリアを抱きたい
あのまま無理矢理にでも抱いてしまえばよかった
事故のようなキスに理性を持ってかれて
本能のままにしてしまったキス

それでも嬉しさがあるのは何故なのか

深く息を吸いこみゆっくりと息を吐き出した


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