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口の中の鉄の味と身体の痛みで目が覚めた

「っい」

身体はベタベタとして
あちこちに痣が目立つ

「ふぅ..」

殺されてしまうかもしれないと思う場面は
何度かあった首を絞められたし
殴られ痛めつけられた

ほっとしている自分は
まだ生きたいと思っている

キッドのたまにの優しさが
忘れられない自分いるのだ

起き上がろうとするが
痛くて起きあがれない

喉がカラカラで体が
水分を欲している
なんとか手を伸ばし
枕元においてあった瓶の中の液体を飲む

カッと喉が熱く感じる
キッドがよく飲んでいる
お酒だったがそれは
ジュースのように甘くて
ゴクゴクと飲んでしまう

潤いとともに押し寄せる
ふわふわとする感覚が
気持ちよくて目をつぶった





うるさいキラーを振り払い
甲板にきたものの
特にやることもなく
空を眺める

「頭!たまにはアリアちゃん
連れてきて下さいよ!」

「そうでよー!
俺らにも潤いを下さいよー!」

ほとんど見せてもいないアリアを見たいという
部下共を睨みつける

「テメェらは陸の女でいいだろうが」

「いや、違うんすよ!
アリアちゃんは純粋そうだし
見てるだけで心が洗われる気がするんすよ!」

そーだそーだと同意の声

「海賊が洗われてどーすんだよ」

アリアに男に会ったらどうなるか
わからんねェぞと脅しているが
この船の奴等は俺のモンなんかに
手は出さねェだろう


「気ィ向いたらな」

「よっしゃー!」

それだけで大喜びの野郎共に溜息が出る

「頭!これアリアちゃんに!俺らから!」

受け取るとそれは何冊かの本だった

「なんだこれ?」

「アリアちゃん、本が好きって噂だから
俺らで集めといたんす!」

人相の悪い奴らが小娘のために
本を集めるなんて想像したくもねェが
歓迎はされているらしい

「・・・渡しておく
連れてきてやってもいいが
アリアに話しかけたりしたら
ぶっ殺すからな」

「えええぇー!!」

盛大なブーイング

「うるせェ!!
連れてこねェぞ!」

「はい!喋りかけません!!」

人を躊躇しないで殺す奴らに見えねェと
2度目の溜息を吐いた


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