H×H | ナノ


▼ 黒との出会い

(あー、最悪・・・!)

ヨークシンシティの夜の公園

夏とはいえ夜は少し寒い
マフィアが沢山いるような
街の公園になど長居はしたくない

今日の泊まる所を探しているうちに
男に襲われそうになり蹴りを入れ
すぐにその場から離れた
あの男もしばらくは動けないはずだ

こういう目にあうと護身術を身につけていて
よかったと心から思う

タダで体を差し出す気はない
見返りもないのに無駄な体力なんか使いたくない

ベンチに横たわり空を見上げる
こんなビルがそびえ立つ都会でも
田舎ほどではないが星は見える
それを見ながら深いため息をつく

イライラするのも体力の無駄

これからどうするか考えないといけないと
職も住む場所もない

いつもは適当に声かけられた人の元へ泊まり
体を使ったり、使わなかったり
ここしばらくはずっとそんな生活をしている

あたしの顔と身体はお金になる
こんな生き方しか知らない

(あの人のとこから出ていかなきゃ良かったかなー)

ちょっと前のことを思い出すが
あそこにいても今の生活も変わらない

考えても仕方がないと頭を振る
街に戻ろうと思い直し立ち上がったと同時に
どこからか叫び声が聞こえ鳥肌が立った

マフィア同士の争いかもしれない

関わりたくないさっさっとこの場から
去ろうと思った時には遅かったらしい

「ねぇ」

後ろから声をかけられる

微かに香る鉄の臭い
この臭いは知っている

「ねぇってば」

苛立ちが伝わるが
振り向きたくないと
脳が拒否してる

それでも振り向かないと
鉄の臭いを纏う人物に
何をされるかわからない

諦めてゆっくりと振り向くとそこには

肩より下まで黒髪が伸びた
綺麗な顔をしたネコ目の男が立っていた
人形の様に整っている顔が暗がりで
余計に不気味に感じる

「な...なにか?」

蹴りの1発や2発でどうこうなる
相手でないのはすぐにわかった全く隙がない

「何しての?」

コテンと首を傾げる
整っているのに不気味感じるのは
暗がりのせいだけではない
表情と行動がともなっていないのだ

「特に何かしてたってわけじゃ・・・。
強いて言うなら今から泊まれる場所探しにいくとこ」

「ふーん」

口元に手をあて少し考えるそぶりをする男を
ただじっと見つめた
数秒なのにこの間が長く感じるのは何故なのか

「あの。用ないなら行っていい?」

黙っていることに
耐えれなくなり声をかけた
ここから立ち去りたいというのが本音だ

「無理。宿探してるんでしょ?
俺のとこ貸したげるよ」

「...え?泊めてくれるの?」

その申し出はありがたい
今の今まで怪しい人物だと
脳が警鐘を鳴らしていたのに
その一言で鳴り止んでしまった

「行くよ。」

体が浮いたかと思った時には
お姫様だっこをされ走り出す

「ちょっっっ!怖い!速い!」

普通の人間の速さじゃない
風が痛いと感じたのは初めてだ
目も開けていられないくらいの
スピードはただ恐怖でしかなかった

「喋ってると舌噛むよ。」

舌は噛みたくないと口を噤み
怖さから男の服を握りしめる事しか出来なかった

prev / next

[ back to top ]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -