▼ 縋るような
すっかり寝入ったアラタに布団をかける
「団長は記憶を奪ってまでアラタを
手に入れたかったのか?
そんな風に見えねェが。」
「さぁ?でも、こんなに執着してんの
アラタだけだろ?
それなりに愛はあるんじゃない。」
テレビゲームに視線を送ったまま
会話をするシャルははぁ、と溜息をつく
「フィンてアラタが好きなの?
やめとけよ。団長に殺されるぞ。」
「はぁ?!んなわけあるかよ!」
アラタは自分にはないと思ってた
庇護欲を掻き立てられる
決して弱い生き物ではないはずなのに
「・・・ここにいたのか」
「あ、団長」
「アラタがフィンに懐いてるようで
すまないな。」
「別にかまわねェ」
アラタをベッドから抱き上げる仕草は
まるで壊れ物を扱うようだった
「団長ー、もっとアラタ大事にしなよ?
また同じ失敗するよ。ってフィンが。」
「俺かよ!」
「・・・あぁ。そうだな。」
団長はアラタを抱えて部屋から出ていく
「団長って以外と不器用だったんだ。
どうでもいい女には優しくできるくせに。」
「・・・そうだな。」
アラタを大事にしているのは
行動で伝わった
◇◇◇◇◇
息苦しさで意識が浮上する
「ん、・・・?」
ぼやけた視界に黒髪とおでこのタトゥーが見えた
今日は髪の毛を下ろしたままでかけていたらしい
「クロロ・・・?」
名前を呼ぶとまた唇塞がれる
拒否する理由もなく受け入れる
さっきまでフィンの部屋にいたはずなのに
いつの間にかクロロとの部屋に戻されたらしい
「アラタ、俺だけを見ろ。
他の誰かを見るなんて許さない。」
命令口調のようでどこか縋っているように
聞こえるのは気のせいか
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