H×H | ナノ


▼ 暗闇のお客さま

目が覚めると辺りは暗く
いつの間にか夜になっていたようだ

クロロはいない
情事後、目が覚めてクロロがいた事はほとんどない

身体は綺麗になって服を着ている
クロロがしてくれたのだろう
手首に残る縛られた跡を見てため息が漏れた

記憶がなくなる前から
あたしとクロロはこんな感じなのだろうか

立ち上がり窓の外を見ていると
人影が見えた気がした
でもそれは闇で紛れてすぐに見えなくなる

普段なら絶対に外に出ようなんて思わないのに
今は出ていきたくて仕方がなかった
出口から出るのはきっと誰かに気が付かれてしまうから
窓から飛び降りるしかない

こんな高さから飛び降りるなんて正気ではないが
大丈夫だという自信があった

窓を開け足を窓辺にかけ思い切り蹴ると
面白いぐらいに高く飛べた
風が気持ちがいい
近づいてくる地面は怖くない

後は足をつくだけ、という時に
誰かに抱きかかえられ瓦礫の中へと降りる

「裸足でこんなとこに足ついたら怪我する」

心地の良い落ち着いた男の声で
自分が助けられたのだと知る

「あ、ありがとう。」

男はあたしと同じ黒髪を長く伸ばしている
顔は綺麗に整っているが
感情のないような表情でこちらを見ている

「アラタ、何してるの?」

あたしのアラタを知っている事に驚く
当たり前だが男の記憶はない
それをクロロではなく、あたしが告げていいのか
わからずに躊躇する
それにこの男の問いかけは
あたしが何故窓から飛び降りたのか、
という意味だけではない気がした

「え、っと。
なんとなく外に出たくて」

「ふぅん。」

とりあえずは何故窓から飛び降りたのか、という
意味にだけ返答をする
観察するような視線を向けられ居心地が悪い
それに耐えられなくなり打ち明けることにした

「あの、はじめましてかな?
あたし今は記憶がないらしくて。
貴方のこと覚えてないの。」

「それ冗談のつもり?
面白くないよ。」

「本当だってば!
クロロと出会った13歳からいきなり
19歳になってて混乱してるの。
最近は慣れてきたけど・・・」

恐る恐る男を見上げると光のない瞳がこちらを見ている

「アラタ、本気で言ってる?」

「うん。覚えてなくてごめんなさい。」

どれだけ親しかったかわからないが
体を触れられても嫌悪しないということは
とても親しい人物だったのかもしれない

「あの、降ろしてくれる?」

記憶にない男に抱えられたままは
少し気が引けた

「降ろしたら逃げるだろ」

「に、逃げない。」

「逃げたら足の骨折るよ。」

「うん。わかった。」

この発言はきっと冗談ではない
この男は冗談を言いそうにないのが
この短時間でわかる

ゆっくりと地面に降ろされ
ほっと胸をなでおろす

「ねぇ、貴方のアラタは?」

「イルミ」

「そう、イルミも旅団なの?」

「違う。」

違う、と言われても警戒心は生まれなかった
本当は皆に侵入者どと知らせなければいけないはずなのに

イルミが手首の痣を指さす

「それなに?」

「あ、これはっ。」

情事中に縛られたなんて言えるはずもなく
口ごもると冷たい手がそっと痣に触れる

「この痣も、髪の毛もクロロでしょ。
本当に悪趣味だよね。
この借りは返してもらうけど。」

冷たい手なのに触れられたところが
じくじくと熱くなる気がした



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