▼ 交わらない思考
ヒソカの言葉にイルミの殺気が
ドアに寄りかかるヒソカへと向かう
「なんで?アラタは俺のだ。」
「でもアラタは帰りたくないってさ」
「俺とアラタの問題に口出ししないでくれる?」
「帰らないならここで僕がアラタを殺すよ◇」
「は?」
「今の僕は君がアラタを庇うより早く殺す自信がある」
そのままトランプを取り出すヒソカに
イルミは舌打ちをした
殺気が分散されやっと呼吸が安定する
イルミがくるりとこちらを振り返り
手を伸ばす
「アラタを殺すのは許さない。
・・・アラタ、帰るよ」
本当はこの手を掴みたい
その気持ちを押し殺す
「・・・帰らない」
「アラタを殺されるのは嫌だから帰るけど、
お前は俺のだから。
それだけは忘れないでくれる?
必ず迎えに来るから。」
ヒソカが開けているドアをくぐり帰って行った
イルミが出ていくのを見届けると
一気に足の力が抜け座り込む
憂鬱で絶望的な気分が胃の底から頭まで広がっていく
「アラタ、大丈夫かい?」
「ヒソカ、本当はあたし
イルミと離れたくな、い」
しゃがみこむあたしの体を持ち上げ
ベッドの上へと移動させられる
まるで赤ちゃんをあやすように
横抱きのまま優しく頭を撫でれる
快楽殺人者のような男とは思えない
優しい手つきだった
「イルミが結婚するのも、嫌。
あたしが逃げたから
婚約しちゃったのかな。」
ポロポロと涙が出てくる
何も言わない代わりに
涙を優しい手つきで拭うヒソカの手は温かい
◇◇◇
ヒソカの部屋を出てからすぐにホテルへと帰る
部屋に入るとアナンが起きていた
キラキラと目を輝かせ抱きついてきた
「イル!イルが助けてくれたの?」
「そんなわけないでしょ。
お前がどうなろうとどうでもいい。」
そんな事を言っても離さない
アナンにイライラとする
「起きたなら帰ってくれる?」
「いや、今日はイルと一緒にいたい。
大事な髪をきられたの。
慰めて欲しい。」
(お前がいるせいでアラタが帰ってこないのに)
無理矢理アナンの身体を引き剥がし
そのまま扉の外へ放りだす
「髪を切られたのは
お前が弱いからでしょ。
さっさっと帰れ」
泣きそうなアナンの顔を見ても何も思わない
そのまま扉を閉めた
家族にアラタを紹介するのは嫌だった
自分だけのものにしておきたい
母さんがうるさいから
婚約して形だけの結婚してしまおう
うるさくなくなったらアラタと
暮らしていこうと思っていたのに
なんでアラタが嫌がるのかわからない
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