H×H | ナノ


▼ 元、飼い主さま

「アラタ、ただいま◇」

部屋でゴロゴロとしているとヒソカの声がした
ここはヒソカの部屋なのに自分の部屋のように
くつろいでしまっている

「おかえり。
ヒソカ、お腹空いたー」

何も口にしていないからお腹が空いてきている
ヒソカにご飯でも連れて行ってもらおうと
うつ伏せに寝てた体を伸ばしながら起き上がる

「アラタ」

その声に弾かれたように振り返ると
不機嫌そうなイルミがそこにいた
婚約パーティーの時に見たが
久しぶりに面と向かう
もうベッドの近くまで来ていて

ヒソカに目をやるとドアにもたれかかり
ニヤニヤとしている

「イル、ミ」

「何、その格好。
ヒソカの前で無防備すぎ。」

自分の服を見下ろすタンクトップと短パンだ
警戒してないと思われても仕方がない
黙っていると腕を引っ張られる

「アラタ、帰るよ。」

帰る

その言葉が理解できなかった

「どこに・・・?」

「家だよ。帰るから。さっ、立って。」

表情はいつもと変わらないが
不機嫌そうなイルミ

「・・・アナンは?」

「アナンがなに?」

「アナンと暮らすんじゃないの?
どうせ結婚するんだろうし。
子どもも、アナンと作るんでしょ。」

キョトンと首を傾げるイルミが
ポンと手を叩く

「結婚するかもしれないけど
それは形だけだし。
アラタとの関係を終わらす気はないよ。
これまでと変わらない。」

「・・・アナンがイルミに抱かれたって」

「まだしてないよ。
子どもはいるけどアラタが
嫌なら精子だけ渡すだけにするよ。
それが心配なの?
そんなのアラタが気にするなんて
本当、俺の事好きだよね。」

ズレているイルミの考え
イルミが人の気持ちに鈍感なのは
わかっているがため息が出る
他の女とキスしたりするのも
嫌だと伝えてあるはずなのに

sexしなければ子どもを作っても
許せるなんて女はそういないだろう

愛人になれと言われている
最初は住む場所があれば何でもよかったのに
どんどんと貪欲になっていく

「今帰ってくるなら
ヒソカの事は許したげる。
魔が差しただけでしょ。
あんな変態なんかアラタの趣味じゃないしね。」

ヒソカと寝たことをイルミは知っている
罪悪感はあるがそれを上回る苛立ちが
全身を駆け巡っていく

「離して」

「は?」

「離してっ」

腕を振り払い壁際へと下がり
イルミから距離をとる

「帰らない」

「何言ってんの?」

「アナンと結婚して
子どもを産ませたらいい。
けど、そこにあたしはいない。」

少しの沈黙の後に言葉の意味を
理解したイルミがあたしを睨む

「・・・そんなの許すわけない」

イルミが放つオーラに肌が粟立つ
息をするのも苦しくなる
首を締められるようなオーラがイルミから発せられ
立ってるだけで辛くなってきたときに

「イルミ。
アラタは帰らないってさ◇
約束通り大人しく帰ってくれる?」

今まで傍観していたヒソカの
空気を読まないような明るい声が聞こえた



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