▼ ピエロとの対話
泊まっているホテルの部屋の呼び鈴が鳴る
セキュリティを無視して来るのはヒソカぐらいだ
確認せずに扉を開ければ案の定ヒソカだった
何故か人を担いでいる
「なに?」
「これ、君のだろ◇」
投げよこされ思わず受け止めると女だった
「なにこれ」
「君の婚約者◇」
ヒソカはするりと横を抜けて
勝手に部屋に入って行きソファに座る
女を床にころがし女の足を引っ張りながら
ヒソカのいるリビングへいき
もう1度女を確認すると確かにアナンだった
髪の毛は長かったはずなのに短くなっている
もうどうでもよくなってアナンを転がしたまま
ヒソカから離れてソファに座る
「あの女髪の毛長くなかった?」
「アラタが切ってた◇」
「は?何でアラタが出てくんの?」
「その子が自分が婚約者だって言ったみたい。
ま。その前にパーティー会場で見てるけどね◆」
「どうせ。ヒソカが連れてきたんだろ。」
「大当たり◇これも君返すよ。」
机に転がされた針を見て
全身が沸騰するように熱くなる
「これ、アラタの頭に刺したヤツなんだけど。」
「思ったより浅い所に刺さってたから
抜き取れたよ◆」
「・・・アラタを抱いた?」
「傷ついてたからね◇」
無意識に針を投げていた
刺さって死んでしまえばいいのにと思ったのに
難なくトランプで弾く
テーブルに置いてあるウイスキーを
勝手に開けて飲み始めるヒソカにため息が出る
「今の僕はアラタのおかげで
感覚が鋭くなってるみたいだ◇
君は婚約したんだからもういいだろ?
その女を抱いたんならアラタを責める事はできないよ。」
「婚約とアラタは別。
何のために針刺してたと思うの?
ヒソカ、お前を殺したい。」
「殺気でわかるよ。
でも、今は女を返しにきただけだし
また時間がある時に殺ろう◇」
「アラタをどうする気?」
「君がいらないなら僕が貰うけど◇
君より大切にするよ。」
「うるさい。
だいたいアラタがヒソカの所に行くはずないでしょ。
アラタの居場所は俺の隣しかないしね。」
「君のその自信はどこからくるんだい?◇
傷ついた女は優しくされと弱いんだよ◆」
馬鹿にしてくるような言い方が気に入らない
どれだけアラタが大切かなのかは
ヒソカに分かるはずがない
「だいたいアラタが婚約ぐらいで傷つくわけない。
俺が大切に思うのはアラタだけだって
アラタだって知ってるし。」
ヒソカはククと笑った
その笑いが気になったがすぐにどうでもよくなる
グラスに注いだウイスキーを飲み干し立ち上がる
「じゃ、僕は帰るよ。
アラタに言われてあの女を届けに来ただけだしね。
お酒ごちそうさま◇」
「俺もアラタ迎えにいく。
ヒソカに預けてたのが悪かった。」
「別にいいよ。アラタが帰りたいと言うなら
連れて帰ればいい。
そのかわりに嫌だと言ったら
大人しく引き下がってくれよ◆」
「わかった」
ヒソカはやはり変だ
アラタが帰りたくないなんて言うはずないのに
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