▼ 何も出来ないくせに
すぐにパーティーにいけるように
ドレスとヘアメイクをしてもらった
血のような赤い色のマーメイドドレスはヒソカが選んだ
選んだ本人は黒いスーツをきて化粧もしていない
どこから持ってきたのか
高級な車をヒソカ自ら運転している
車に揺られながら少し冷静になれた
暗殺を生業にしている家が
本当に婚約パーティーなど開くのか
もしかしたらまたヒソカの悪戯かもしれない
ヒソカをじろりと見るとなんだい?と微笑む
ヒソカの嘘を見抜くのは難しい
そんなことを考えていると車がとまり
運転席から降りたヒソカが助手席を開け
エスコートをしてくれる
黙ってその手を取り車から降りて
周りを見渡すと大きな屋敷があった
ここが会場らしい
中に入ると既に人が大勢いる
手渡されたシャンパンと置いてある
ビッフェ形式の食事を少し食べた
「この人たちも殺しを生業としている家の人達だよ◇」
あたしが知っている政界の人間は仮面で己を隠すのに
殺しを生業にしている人達が顔を隠さずに
堂々としていて驚いてしまう
「顔隠さないんだ・・・」
「表には出てこない人達だからね。
顔なんか隠さなくても大丈夫◆
あぁ・・・いつか狩りたい人間も数人見つけた◇」
舌なめずりをするヒソカを睨むと
「大丈夫◇
今日は大人しくしとくよ。
イルミの大切な婚約パーティーだしね◆」
神経を逆なでする物言いは絶対にわざとだ
チッと舌打ちをしたその時会場の照明が落とされた
「皆様!今日はお越しくださいましてありがとうございます!」
この声は聞いたことがあるイルミの母親の声だ
声のする方を見ると
昔の貴族が着ていそうなドレスを身につけて
目に機械をつけている女性がマイク握っている
上機嫌に言葉を並べている彼女は
今日のパーティーが余程嬉しいらしい
イルミの母親の声はほとんど耳に入ってこない
入口の大きな扉に照明があたった
開かれた入口にはスーツを着たイルミと
見たことのある赤髪の美女
前にイルミと行ったパーティーで
喧嘩を売られた相手だ
アナンという名前だった気がする
切れたと思っていたのにそうじゃなかったらしい
「アラタ、大丈夫かい?◇」
心配そうな台詞を吐くくせに顔は笑っている
「うる、さい」
アナンはイルミの腕に寄り添い会場に入ってくる
イルミはいつも通り無表情だ
会場に設置されている舞台に上がると拍手がおこる
もちろん拍手なんてする気が起きない
本当は今すぐにでも飛び出して行きたい
あの女を殺してしまいたい
そうするとイルミの立場が悪くなる
そんな事を考えてしまうのは
やはりイルミの事が好きだからだろう
「帰る」
「いいのかい?◇」
「なんか、ここにいたくない。
残りたいなら残れば?あたしは帰る」
「君を一人で帰すわけないだろ?◇」
ヒソカの手が肩に回されても不快には思わなかった
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