▼ 家族になるには
泣き疲れたのか
眠ってしまったアラタを
膝に寝かせ頬を撫でる
少し目元が赤くなっている
アラタが独りになっていくのが
嬉しくてたまらない
「本当に俺しか頼れなくなればいいのに」
胸ポケットに入れている
携帯のバイブが振動する
「なに?」
[イルミ。次のお見合いなんだけど]
「試験前にしたでしょ」
[お見合いなんていっぱいあるのよ]
「ふーん。とりあえずたまってる
仕事終わってからでもいい?」
[ええ!相手方が是非に!と言っているの!
それともお付き合いしている方がいるなら
その方と結婚でもいいのよ?]
「・・・」
[あら!お付き合いしているの!?]
「・・・考えとく。それじゃ」
電話を切り
アラタを見る
家族に見せたくないと思っていたが
結婚してアラタを
ずっと自分のものにするのもいいかもしれない
結婚なんて考えてなかったが
見合いも女の相手も煩わしい
もっと早くに思いついていればよかった
まだスヤスヤと眠るアラタの唇に
キスをした
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