気分転換しよ?


「何やってんの。」

「あれ、赤葦じゃん。」

立ち入り禁止になっている屋上。
諸々事情があって鍵を手に入れた私は、そこをいいサボり場所にしていた。

「赤葦が来るなんて珍しいね。」

同じクラスの赤葦京治。
赤葦とは割と仲が良いと思う。
秋紀達と出会ったのも、赤葦がきっかけなくらいだ。

「別に。
浴西はいつもここにいるの?」

「いつもじゃないよ。
今日みたいにいい天気ならここにいるけど。」

「そう。」

赤葦が私の隣に座る。
なんか元気がない。

「元気ないじゃん。
どうしたの?」

「…ちょっと。」

「部活のこと?」

「まぁ…。」

赤葦は毎日忙しそうだ。
以前もまあ…あの部長だ。
忙しかったとは思うけど、今の方が断然忙しそうにしている。

「浴西は?」

「ん?」

「いつも1時間サボったらその後の授業は出てるのに。
今日は出てないけど何かあった?」

特別なことは特にない。
だけど、強いて言うなら


「腰が痛くて。」


そう言うと、聞かなきゃよかった、みたいな顔をする赤葦。

「バレー部って…まあ元バレー部だけどさ、なんであんなに体力あるの?」

「木兎さん?」

「いや秋紀。
光太郎だったら私今日は学校来れてないと思う。」

「…確かに。」

ちょっと納得気な赤葦。
赤葦的にも思うところがあったのだろうか。
ジッと赤葦の横顔を見る。
整った顔立ち。
目は気だるそうだけれど、ジッと見つめられると妙に色気が漂っているということを私は知っている。

赤葦とは1度だけ、体を重ねたことがあった。

「ねー赤葦。」

「何?」


「暇ならセックスしない?」


「…は?」

いつもより目を開く赤葦。
驚いてるみたいだ。
面白い。

「いいじゃん。
どうせここ、人こないし。」

「そういうことじゃないから。」

「なんで?
サボってるんだから暇でしょ?
いい気分転換になるよ?」

「浴西腰痛かったんじゃないの…。」

「なんかヤッたら治りそうな気がするんだよね。」

「悪化するだけだから。」

「ねー、赤葦ぃ。」

「やらない。」

「いーじゃんかー。」

「良くない。」

秋紀も光太郎も一発で落ちたのに。
赤葦だってこの前は……ああそっか。

「わかった。」

思わずニヤリと笑ってしまう。

「…何が。」


「早漏なの、まだ気にしてるんでしょ?」


「!?」

どうやら図星みたいだ。
赤葦は童貞だった。
それを私が奪ってしまったわけだけど、その際、赤葦はすぐに達してしまった。
私は全然なんとも思っていないけれど、本人はそれが結構恥ずかしかったらしい。
赤葦も思い出しているのか、私からふいっと顔を背ける。
その仕草がなんだか可愛い。

「大丈夫だって。
この前は初めてだったからでしょ?
だからさァ。」

「や、やらない。」

「動揺してますね、赤葦くん。」

「…うるさい。」

顔が赤い。
初心な反応するから本当面白いな。
でも、あんまり揶揄うと可哀想か。
それに腰が痛いのも嘘じゃないし。

「わかったよ、もう揶揄わないからさ。
でも、気分転換はしようよ。
今日部活は?」

「え…普通にあるけど。」

私の勢いに押されたのか、普通に答えてくれた。

「じゃあ部活終わってからデートしよ。」

「はぁ?」

「いいじゃん、ご飯食べに行くだけだよ。
あ、それとも家来る?」

家来る?という言葉に反応する。
警戒されているらしけど、そういうのって普通女の子が警戒するんじゃないだろうか。
まあいいけど。

「……ご飯食べに行くくらいなら。」

「じゃあ決まりね。
部活終わったくらいに体育館行くよ。」

「…わかった。」


キーンコーンカーンコーン


授業終業のチャイムが鳴る。
赤葦は教室に戻っていった。

私は……とりあえず保健室でも行って寝ようかな。



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