ズルい男


一糸纏わぬ姿のままベッドに座り、スマホを弄る。
何通か入っているメールは、つまらない男ばっかりだ。

また今度誘ってネ、と。

適当にそんな返事を返す。
……てゆうか、いい加減気付けよ。
今度なんか無いんだよ。
どうしよ、拒否しようかな。

そんなことを考えてると、ガチャッとシャワー室の扉が開く音。

「お前もシャワー使えば?」

「うん。
ありがと。」

シャワーを浴びながら考える。
この人、どうしよう。
特別良かった訳でもない。
でもまあ……とりあえずキープかな。

軽くシャワーを浴びれば、ベッドに戻り、服を着る。

「あれ?もう帰るの?」

「ごめんね。
明日も朝早くて…。」

まぁ…

「ああ、仕事?」

「うん、そうなの。」

仕事なんて…

「そっか。
じゃあ仕方ないね。
また相手してよ。」

「ありがと。
うん、いつでも連絡して。」


嘘だけど。


ホテルを出ると、駅まで送ってもらうと、そこから数駅下った駅で降りる。
その駅から歩くこと5分ほど。
私の住むマンションに到着する。

「ただいま。」

そう声をかける。
誰もいないからそんなことは無意味なのだけれど、癖みたいなものだ。
私は寝室に入るとクイーンサイズのベッドに寝転ぶ。

まだ11時半。

……どうしようかな。
壁にかかった時計。
そしてその下には高校の制服がかかっている。
仕事なんかしてない。
まだ高校3年生だから。


ブー…ブー…


スマホに着信が入る。

「誰……。」

体を起こすのがダルい。
名前を見ると、よく見知った名前。

「……なに…。」

『よっ。
たまたま家に帰るのが見えたから電話した。』

「え、近くにいるの?」

『おう。
駅から付けてたからな。』

「それストーカー……。」


『家の前来てるからサ。
入れてくれない?』


その言葉とほぼ同時に鳴らされるインターホン。
どうやら本当のようだ。

私はダルい体を引きずるように玄関を開けた。

「なに、秋紀。」

目の前でニヤニヤ笑う男は木葉秋紀。
この前卒業した1個上の先輩だ。
立ち話もなんなので、とりあえず秋紀を招き入れる。
本音は独り暮らしの女の子の部屋に男が出入りしている、という噂を流されたくないだけだけど。


「いやぁ、4月になったのに中々寒いよね。」


唐突に話し始める秋紀。

「何が言いたいの。」

「ん?
寒いからココにさ…」

ニヤニヤ顔を崩さないまま、私のお腹をトントン突つく。
ちょうど子宮のあたり。


「入りたいなぁ、って。」


「最低。」

「何とでも?」

ソファに押し倒される。

「あのさ……私疲れてるんだけど。」

「セックス疲れデショ?」

「そう。」

「じゃあいいじゃん。」

「意味わかんない。」


疲れも吹き飛ぶくらい、ヨくしてアゲル…。


耳元でそんな風に呟くと、秋紀は私にキスを落とす。
最初は触れるだけ。
それが少しずつ深くなっていけば、私もその気になってくる。

「…シたら……また疲れる……。」

「じゃあシなくていいの?」

「……。」

良くない…。
この男のせいだ。

「なぁ……柚瑠…。」

1つ歳上とは思えない色気。


「いいだろ…?」


いつもそうだ。
絶対私が頷くまでシない。
無理矢理してくれれば後で文句も言えるのに。

「……て…。」

でも私は断れるワケがなくて。

「何?聞こえない?
今日はやめとく?」


「やだぁ…シて……。」


今日も私は堕ちていく。



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