雨
梟谷学園男子バレーボール部副主将。
これが俺の立ち位置。
俺は2番目。
1番は木兎光太郎。
梟谷学園男子バレーボール部主将。
普段は途轍もないスパイクを放つスパイカー。
全国5本の指に入るエースとしても申し分ない実力の持ち主。
けれど一度冷静さを欠いてしまえば、一気に周りが見えなくなってしまう。
誰かが言った。
『まるで末っ子のようだ』
と。
俺はその2番目というポジションに不満はなかった。
「赤葦!!もう一本!!!」
「はいはい。」
「赤葦ぃ!
黒尾がぁぁあ!!」
「何があったのか知りませんけど、孤爪には連絡しておきますね。」
それはきっと部活の中では2番目でも、木兎さんの1番でいられたからだ。
俺にとっても木兎さんは1番だった。
そしてもう1つ。
俺は生まれた時、もうすでに2番目だった。
赤葦家の第二子。
父も母も声を揃えて言った。
「先ずはお姉ちゃんからね。」と。
けれど、俺はそれにも不満はなかった。
「京治、一緒に買い物行かない?」
「うん。いいよ。」
「はい京治。
これあげる。
お母さんには内緒ね?」
「ありがと、姉さん。」
姉さんの1番でもいられたからだ。
俺もそうだった。
俺にとっても姉さんは1番だった。
2人なのに1番はおかしいかもしれない。
でもそうだった。
「ごめん赤葦、明日は俺用事ある。」
「そうですか、わかりました。」
「ごめんね京治。
明日はちょっと……。」
「そう、わかった。」
木兎さんの1番は姉さんに。
姉さんの1番は木兎さんになった。
わかってる。
頭ではわかってるんだ。
俺が2人を1番と思っているように、2人も俺にそう思ってくれていることを。
なのに
どうして心に黒い感情が渦を巻いているのだろう。
まるで雨が降っているようだ。
けれど
「じゃあ言ってくるね、京治。」
「いってらっしゃい。」
大丈夫。
2番目には慣れているから。
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