その関係が妬ましい




「……どこ行ったんだ。」



高校の中庭で1人。
俺はキョロキョロと周りを見渡すけれど、その人は見つからない。
イライラが募り始めた頃、スマホが震えてメールが来たことを告げた。
画面を開くと、差出人は木葉さんだった。

『クラスの奴より情報。
高校棟4Fにて目撃。』

高校棟……。

俺は木葉さんにお礼のメールを送ると、高校棟の4階へ向かった。





4階まで行けば、聞こえた声。
ここにいることは間違いなさそうだ。
そのまま声のする教室へと向かえば、そこで大笑いをしている当の本人を見つけた。


「木兎さん。」


「うおっ!赤葦!?」

木兎さんは俺に全く気付いていなかったようで、馬鹿でかいリアクションをした。

「木兎さんが交代の時間になっても来ないので呼んで来いと小見さんに言われて来ました。」

「もうそんな時間か?」

……まったく、この人は……。
ハァとため息を吐けば、制服を後ろからクイッと引かれた。

振り向けばそこにはよく見知った人。

「ごめんね、赤葦。
光太郎が迷惑かけて……。」

「いや、今更なので大丈夫です。」

「……そっか。」

その人はそう言って苦笑い。

「じゃあ俺ちょっと行ってくるわ!
なまえは赤葦とちょっと待ってろ!」

「え、ちょっと木兎さ…」

木兎さんはそう言い残すと、ダダダダダとデカい足音をさせて去っていった。

「……ごめんね赤葦。」

「……いえ。」

なまえさんは木兎さんの幼馴染み。
部活には入っていないけれど、よくバレー部にも顔を出してくれるからそこで知り合った。
……顔を出してくれるというか、木兎さんに無理矢理連れてこられているという表現の方が正しいような気もするけれど。

「光太郎は待ってろって言ったけど、ここにいなくてもいいよね?」

「いいと思います。」

なまえさんにこのあとの予定を聞けば、クラスでの当番はもう終わったからフリーとのこと。
赤葦は?と聞かれれば、俺もです、と答える。

「じゃあ適当に回る?
赤葦は片付けまで残ってなきゃダメだろうし、私が先帰ったら光太郎うるさいし。」

「そうですね。」

そう簡素に答えながらも心の中ではガッツポーズ。

「てゆうか本当、赤葦もいつも大変だよね。
ごめんね。光太郎が面倒かけて。」

「……いえ。
でも大変なのは俺だけじゃなくてなまえさんもですよ。
むしろ俺より拘束時間長いじゃないですか。」

そう言えば、なまえさんはそうだね、なんて言って苦笑い。

「結構言われるんだよね。
木兎の面倒見てたら彼氏も出来ないんじゃないの?って。」

そうですね。と、肯定することはできなかった。
木兎さんがどう思っているかはわからないけれど、少なくともなまえさんの気持ちには気づいていたから。

「私は好きでやってるからさ。
ほっとけないっていうか、なんていうか。」

気が付くと目で追ってるんだよね。そう言ってえへへと頬を染めて笑う彼女は、最高に綺麗だった。


『羨ましい』

そんな言葉しか俺の頭には浮かばなかった。


fin


[ 13/13 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]