Happy Halloween!


「「「Trick or Treat!!」」」


朝、部室に入ると三馬鹿に捕まった。

「………。」

無視して中に入るけれど、そんなのでへこたれる三馬鹿ではない。
特に…


「ねえ力!!
Trick or Treat!
Trick or Treatだよ!
意味知らないの!?知ってるよね!?」


うるさい…。
同じクラスのなまえ。

「龍之介も夕も知ってたのに!?」

「馬鹿だなー!
力が知らないわけないだろ!!」

「夕にだけは言われたくなかった…!」

ぎゃーぎゃーと騒ぐ3人。
呆れてため息が漏れる。

「お前らうるさい…。
あんまり騒いでたらキャプテンに叱られるぞ。」

「「「うっ…」」」

三馬鹿をその一言で静かにすれば、三年の先輩方もタイミングよくやって来た。

これで静かになるな。
でも、そう思った俺が甘かった。

「ねえ力ー!」


「ねえねえ!力ってばー!!」


「Trick or Treat!!!」


田中と西谷は早々に諦めたのに、なまえだけは頑なに諦めなかった。

「Trick or Treat…。」

「なまえ、帰らないの?」

「…帰るけど……。」

他の部活のみんなが坂の下商店へ行く中、なまえと二人で横道へ入る。
そこで右手を差し出すと、なまえは握る。

「Trick or TreatのTrickってどういう意味かしってる?」

そう尋ねれば、なまえは首を傾げる。

「イタズラでしょ?」

「そう。
じゃあTreatは?」

続けてそう問えば、うーんと首を傾げる。

「お菓子?」

そんなことだろうと思っていたから、予想が当たって思わず笑う。

「…違うか。
じゃあ……」

なんて意味?とでも続くのだろうけど、言う前にその口を塞いでしまう。


「Treatはもてなし。あとは御褒美って意味もある。
今のじゃTreatにならない?」


いつも通りの顔を保っているつもりだけど、果たしてどうだろうか。
内心はドキドキバクバクと心臓がうるさい。

「な、なる…なります…。」

なまえは真っ赤な顔でコクコクと頷いた。


「じゃあ…「で、でも…!!」」


なまえは真っ赤な顔をそのままに、俺のジャージをギュッと握った。

「私は今Treatだったけど…わ、私は力に渡すお菓子とか持ってないし…。」

「…なまえ?」

「だ、だから力は…Trick…かなって…。」

顔を覆う。
三馬鹿だと思っていたけど、俺の彼女は群を抜いて大馬鹿だったらしい。


[ 11/13 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]