かえりみちをごいっしょに




「こんにちは。岩泉さん。」

「お、おう…。」

次の日の放課後、本当に一ノ宮は昨日同様に校門前で待っていた。
ただ違うのは、昨日は私服だったのに今日は制服を着ていたことだ。

「本日ご友人の方々はご一緒ではないんですか?」

「ああ、今日はあいつら用事あって…。」



「では帰り道をご一緒させてください!」



…………言われそうな気はしていた。

「……いいけど。」

特に断る理由もない。
ハァとため息を一つ吐くけれど、一ノ宮には恐らく聞こえていない。

一ノ宮と少し会話をしながら駅まで歩く。

「お前は下りと上りどっちだ?」

「私は岩泉さんをご自宅までお送りしましたら帰りますのでお気になさらず。」

「女にそんなことさせらんねーだろ。
お前ん家の最寄り駅は?」

「私のことはお気になさらず。」

「だからそんなことできねーだろ。」

そんなやり取りが何度か続き、やっとの思いで白状させる。
聞けば一ノ宮の使う最寄り駅は、ここの駅から新山女子より更に20分程先だった。
俺の使う駅は新山女子の反対側。

「……俺が送ってくから。お前の家の近くまで。」

「岩泉さんにそんなことさせられません……!」

今の時間は夕方。
まだ空は明るいが、今の時期、俺が家に帰る頃には薄暗くなる。
俺よりも家が遠い一ノ宮は、家に帰る頃、辺りは真っ暗になっているはずだ。

「暗くなったら危ねーだろ。」

「でも……。」

「いいから。いくぞ。」

いつもとは逆のホームへ行く。
一ノ宮は付いてくるけれど、明らかに静かになった。

「……迷惑だったか?」

「え?」

「無理矢理お前を送ってくってことになって、迷惑だったら悪い。」

「そんなことありません。
私のわがままで、私こそ岩泉さんにご迷惑を……。」

「俺のことは気にすんな。」

一ノ宮の最寄り駅に着くと、改札を出る前に一ノ宮に止められた。

「岩泉さん、ここまでで大丈夫です。
ここから戻ればお金はかかりませんし、これ以上ご迷惑をかけるわけには行きません。
私の家は駅から近いので。」

「そうか。
じゃあ気をつけろよ。」

「はい。本日はありがとうございます。
明日もお迎えに上がりますね!」

一ノ宮はそう言うと、改札を出て人混みの中へ消えていった。


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