MB5

(※高校生)



「いやぁぁぁぁあ!!!!」



「!?」

俺が部室のドアに手をかけた瞬間、部室の中から悲鳴が聞こえた。
それは月島の声で、今まで聞いたこともない悲鳴。
これは緊急事態だと思って勢い良くドアを開けた。

「どうした!?」

「!
い、岩泉ぃ!!」

その瞬間、俺に気付いた月島が叫びながら俺の背中に隠れた。

「助けて岩泉ぃ!」


「おいどうし「ごめんって!」


月島の後を追うように出てきたのは及川。
脱ぎかけの制服、あらぬ考えが浮かぶがそんなはずはない。いくら及川だってまさかそんな…。
そんなことをモヤモヤ考えていたはずが、気が付いたらもう殴っていた。

「ちょっ!岩ちゃん!?」

「まさかここまで最低な奴だとは思わなかった…。」

「待って!絶対何か勘違いしてる!!」

クズばかり相手にしていても仕方が無い。
背中に隠れたままの月島に何があったのか聞く。


「…及川が…無理矢理……。」


「…ほんとにクズ野郎だな…。」

「ち!違うってば!
灯ちゃん!誤解を生む言い方ヤメテ!
あと岩ちゃん顔怖すぎだから!!」

もう一発キメてやろうかと思った時、視界の端に月島の指が映った。
月島が指差す先は、月島達が出て来た部室の奥。

「アレ……どうにかして……。」

月島は俺の制服をギュッと握る。
…アレ?
月島に促されるまま、奥の部屋へ行く。
が、何も変わったことはない。

「月島、アレってのは…」

「……。」

「?」

月島がまた指をさす。
その先にいたのは細長い…


「…アオダイショウ?」


なるほど。

ニョロニョロとゆっくり窓枠を這うアオダイショウを掴むと、窓の外へ逃がす。
どこから入ってきたのかは知らないが、当の本人も慌てた様子で逃げていった。

「月島、外に出したぞ。」

そう声をかけると、俺の背中越しに恐る恐る窓枠を見て、ホッと息を吐いた。

「よかったぁ…。
岩泉ありがとう……。」

気が抜けたのか、月島は腕を回して俺の右肩に頭を預ける。

「おんぶか?」

「ん…。
おんぶしてぇ…。」

今日は甘えたがりだな、そんなことを思いながら月島を背負う。

「中学んときもこんなことあったな。」

「そうだねぇ。
その時も岩泉に助けてもらって……岩泉ヒーローみたい。カッコ良すぎ。」

「言い過ぎじゃねーの?」

そう言って笑うと、そんなことないよ。と月島も笑う。


「灯ちゃーん、岩ちゃ…ぎゃぁぁぁあ!!」


「うるさ。」
「うるせぇ。」

月島を背負ってるせいで、殴れないのが残念だ。

「なんでなんで!?
なんでこんなことになってるの!!?」

「お前が役に立たねーからだろクソ川。」
「そーだそーだ。」

「だ…だっていつも灯ちゃん、虫でもカエルでも持って窓の外に捨てるじゃん!」

「捨ててるんじゃなくて逃がしてるんですー。」

「どっちでもいいけど!
……だからヘビだけ苦手だなんて思わないじゃん。」

月島に話を聞けば、部室でヘビを見つけた及川が「灯ちゃん助けてー」といつも通り月島にそれを報告したらしい。
ヘビだと知らなかった月島が及川に付いて行き……俺が部室前で聞いた悲鳴をあげた、と。

「お前月島がヘビダメだって知らなかったのかよ。」

「逆になんで岩ちゃんは知ってるのさ!」

「中学の時に岩泉に助けてもらったことあるもん。」

「何それ俺知らない!」

「言ってねぇし。」

ギャーギャー文句を言う及川を無視して月島を下ろす。

「大体なんで岩ちゃんは灯ちゃんおんぶしてるのさ!!」

「お前には関係ねーだろ。」

「な……いけど…!!」

文句を言いたそうな及川を尻目に、あははと笑う月島。


「岩泉は私のヒーローだからね!」


だから大袈裟だろ、そうため息を吐けば、及川が「岩ちゃんズルイ!」とか訳のわからないことをいい始めた。
MB5。マジでぶん殴る5秒前。

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