response to confession


門の前にいた二口。
腕を組んで、難しそうな顔をしている。



「フっ!二口!」



思わず声が裏返ってしまった。
ドキドキと心臓が早鐘を打つ。
二口はこっちに振り返ると、「ウス。」と頭を下げられた。

「……ごめんね、花巻が変な電話して……。」

「いえ、大丈夫です。
怪我…したんですか?」

「う、うん。
ちょっとだけだけど。」

「そうですか。
なら良かったです。」

「……。」

「………。」

「………あ、タ、タオル!
ありがとうございました。」

話すことが無くなり、私はバッグの中から二口に借りたタオルを出し、返す。

「別にタオルくらいよかったのに。」

「そんな訳にはいかないし…。
今度またちゃんとお礼するね。」


「…別に、無理しなくていいですよ。」


「……そんなこと。」

“チャラチャラした奴なんて大っ嫌い!!”

……本当、自分が嫌になる。
二口は目を合わせてくれない。

私達は会話のないまま、駅まで歩いた。
何か話さないといけない。
それで、きちんと自分の気持ち伝えないと…。

そう思ってたら、もう駅は目前だった。


「…月島さん。」


「は、はい?」

先に口を開いたのは二口だった。
けれど、嫌な予感。




「大会の会場であった時……挨拶くらいはさせて下さい。」




最初に拒絶したのは私。

思わず足が止まる。

でも二口は止まらない。



「…待って。」



私の声は二口に届かない。
二口が行っちゃう。



………行かせちゃだめだ。




「待って!」



私は二口の腕を掴んだ。

「え、月島さん?」

二口は驚いて振り返るけど、正直1番びっくりしてるのは私だ。


「ちょっと来て!」


私は二口の腕を掴んだまま、この前花巻に話を聞いてもらった公園へ歩いて行く。
二口は呆気にとられて私に掴まれたままついて来てくれた。


「…二口。」


公園に来て、私は振り返る。
この前もそうだったけど、やっぱり人通りが少ない。
もちろん、その方がありがたい。


「…先ず……この前はごめんなさい。」


私はそう言って頭を下げる。

「あの時は私…パニックになってて…。
何と言うか……。
とにかく、二口を悪く言うつもりはなかったの…。
ほんと……ごめんなさい……。」

うまく伝えられないのがもどかしい。
二口は少しだけ笑っくれた。

「…ちょっと楽になりました。
ありがとうございます。」

とりあえず、ホッとした。
けれど二口は『でも…』と続ける。


「優しくされると期待します…。
まだ可能性あるんじゃないか、って。
だから今日あのまま別れてくれた方が諦めつくっていうか…。」


女々しくてすみません、そう二口は自嘲した。
ドキンと、私の心に何が刺さる。


「……そんなこと言わないで。」


「え、ちょ…月島さん……?」

ぼやっと視界が歪む。
1度瞬きすれば、それは滴となって頬を伝った。

「私…まだ返事返してないから……。
言わせて…。」

ズッと鼻をすする。
返事?と首を傾げた後、二口は慌てる。

「え、だって俺…フられて…。」

「フッてない。」

「………え。」

1歩二口に近付く。
本当は泣いてるブサイクな顔じゃなくて、ちゃんと言いたかったけど。



「私も貴方が好きです。
私を…一緒にいさせて下さい。」



死んじゃうんじゃないかってくらい心臓がドキドキと高鳴る。

「……ほんとに…?」

二口は最高にびっくりしてた。


「ほんとに…俺でいいんですか?」


そんな風に聞かれて、私は首を横に振る。
二口『で』いいんじゃない。



「あなた『が』いいんです。」



二口の鼻と目が少し赤くなり、気が付いた時には二口の腕の中だった。

「ふ、二口…」


「ありがとう。
俺、アンタのこと大事にするから。」


ギュッと抱きしめられて、二口からもドキドキという鼓動を感じた。

なんだ、おんなじだ。

ドキドキしてたのは私だけじゃなくて、二口もそうだった。


「うん。
よろしくね。」


私もギュッと、二口の背中に腕を回した。




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