surprise confession



門のところに、人がいた。
青城の制服ではない。

「…二口。」

すぐに分かった。
二口は私の方を見るとペコッと頭を下げる。

「お疲れ様です、月島さん。」

「お疲れ様。」

二口と話すのはちょっとだけ緊張した。
なんでだろう。
久しぶりだから?
気まずいままだから?

とりあえず、二口の隣を歩いて駅へと向かう。
でも、どうして青城までわざわざ来たんだろう。
私に何か用事でもあったのだろうか。

「……月島さん。」

最初に話し出したのは二口の方だった。

「何?」

二口の顔を見られない。
今までは難なく出来たことなのに。



「俺に何か聞きたい事、あるんじゃないですか?」



………は?

何を言われるのかと思いきや驚いた。
そして思わず二口の顔を見てしまった。
二口はニヤリと笑っている。

「ありますよね?」

ドキン、心臓が鳴る。
なんだか熱い。
また、顔を背ける。
けれど、ねぇ、なんて回り込まれたら逃げられない。
観念するしかなかった。

「……彼女さん…」

「はい?」

「いるのかなって…。」

ついに聞けた。
ほとんど無理矢理聞き出された感じだけど。

「なんでですか?」

「…だって…ベニーランドで…。」

「ベニーランドで何か見たんですか?」

「女の子と…手、繋いでたし…。」

そうですか、と一言。
もう会うの辞めましょうとか、そんな事を言われるのだろうか。
仕方ないかな、なんて思いながらもやっぱりそれは寂しかった。


「月島さんはなんでそれ知ってるんですか?」


返ってきた言葉は答えではなかった。

「……それ、関係ある?」

多分今、私はちょっと不機嫌な顔をしている。
でも対する二口はニコニコ笑っている。
意味がわからない。

「ありますよ?」

「ハァ?」

「月島さんもベニーランドにいたんですか?」

「…そうだけど。」

「誰とですか?」

「お…及川…。」

確かにニコニコ笑っているけど、ずっと笑顔を貼り付けられると怖い。

「ふぅん、そうですか。
月島さん達も広場から見てたんですか?」

「えっと……ちょっと高くなってるとこ…ろ……。」


何となくわかった。
二口が言わんとしていることが。


「それってカップルだけが行けるところですよね?
及川さんと付き合い始めたんですか?」

「ち!違う…!」

私達だって付き合ってないけど手は繋いでた。
あれだけの人混みだし、迷子にならないように。


「俺達もそうですよ。
一緒に居たのは幼馴染で、彼女じゃないです。」


「え…そうなの…?」

「はい。」


幼馴染…?


そう聞くと、急に気が抜けた。

「…そうなんだ。」

「そうですよ。」

幼馴染。
あの女の子は二口の彼女じゃない。

「…そっか。」

思わず、顔が綻んでしまう。
そっかそっか。
彼女じゃないんだ。

「何ニヤニヤしてるんですか?」

私の顔を見て意地悪く笑う二口。

「ニヤニヤなんかしてないよ。」

「してるじゃないですか。」

今までうだうだ考えてた自分がアホらしい。
でも…よかった。
嬉しかった。
…なんで嬉しかったんだろう。

「してませーん。
してるのは二口デショ?」

「まあそうなんですけどね。」

「認めちゃうんだ?」

「そりゃ認めますよ。
久々に月島さんと話せて嬉しいし。」

すぐそういう事言っちゃう感じ。


「…なんか二口ってチャラいよね。」


前からちょっと思ってた。
身なりもそうだけど、言動がチャラい。

「……そうですか?」

二口はびっくりしたみたいに私の方を向く。
自覚がなかったなんて意外だ。

「なんか言動が…チャラい。」

「俺、結構堅実な男だと思いますけど。
名前だって堅治ですよ?」

「…フッ…。」

「鼻で笑うのやめてください。」


二口とそんな風に話をしていれば、駅が見えた。

「二口は電車?」

「いえ、俺バスです。」

「…そっか。」

じゃあここでバイバイだな。
ちょっと寂しい。

「今日はわざわざありがとね。」

「いいえ、こちらこそ。
よかったです。
誤解が解けて。」

「う…ごめん。」

チラッと電光掲示板を見れば、あと5分で電車が来る。

「じゃあ私はそろそろ…。」

「はい……あの、月島さん。」

「ん?」



「好きです。」



次どこか行きませんか?とかそんな感じだったら嬉しいな、なんて思ってたのに。

「………え?」

好き?
って…どういうこと?


「好きなんです、月島さんのこと。
答え…考えてくれると嬉しいです。」


失礼しますとその場を去る二口。
好き…?
好きって……。

顔に熱が集まる。
ドキドキと心臓が早鐘を打つ。

私…どうしたらいいの……?




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