月島さん家の真ん中っ子と末っ子。
「金田一勇太郎です!」
「国見英です。」
4月。
私達は3年生になり、男子バレー部には何人も新入生が入ってきた。
「あれ?
2人とも北一出身?」
金田一と国見。
2人の顔には見覚えがあった。
私の記憶では、もっと小さくて幼い顔をしていたけれど。
「はい。」
「あ!
もしかして月島さん、中学の時女子バレー部でした?」
私を見下ろす金田一と国見。
そう聞いた金田一の目はなんだか純粋で綺麗な目をしていた。
「……うん。
そうだよ、女バレだった。」
これは事実だし、男子バレー部と女子バレー部は隣で練習してたんだから知らないわけがない。
私、身長も高いし。
「バレー、辞めちゃったんですか?」
恐らく金田一には、悪意はない。
純粋な疑問を私に投げかけているだけだ。
…そう、それだけなのに、
「………。」
なんと言ったらいいのかわからない。
「…金田一、あんまりそういうこと聞かない方がいいよ。」
国見が何かを察してくれたらしく、金田一のジャージの袖を引っ張る。
「大丈夫だよ、ありがとね。」
「金田一、国見ちゃん。
灯ちゃん捕まえてサボるなんて、いい度胸だね。」
「げ。」
「国見ちゃん、げって何?」
「………いえ、別に。」
今日は及川に助けられた。
そして、及川が2人と話しているのを見て、思い出した。
『及川さん、サーブトスのコツ、教えて下さい。』
『嫌だね。
バーカバーカ。』
名前はなんと言ったか。
及川呼んでいるのを何度か耳にしたはずなのに。
あの子はどうしたんだろう。
どこの高校に進学したんだろうか。
「姉ちゃんさ、及川さんの彼女って知ってる?」
家に帰ると、すでに帰ってきていた蛍に聞かれた。
「お、及川の彼女?」
蛍から及川の名前が出たのも驚いたし、その内容が彼女のことだったのも驚いた。
「えっと……突然どうしたの?」
「……なんか王様がサ。」
「王様?」
何?
烏野高校には王様がいるの?
「王様っていうのは…」
蛍から王様について聞いた。
王様っていうのは蛍の部活のチームメイトの事。
どうして王様なのか聞けば、どうやらその子は中学のとき『コート上の王様』という異名があったらしい。
「王様くんについてはわかった。
で、その王様くんと及川の彼女はどう関係してるわけ?」
「王様がその及川さんの彼女のこと好きなんだってさ。」
ニヤニヤ笑う蛍。
「ふぅん。
で、私に聞いてどうするの?」
「王様が3年間片想いしてる人がどんな人か見てみたくてさ。」
「中学生のとき?」
「そ。
王様が中1だから姉ちゃんたちが中3。」
「中3の時………うーん。」
私が知っているだけでも4、5人……。
改めて考えると及川、どんだけプレイボーイなんだろう。
「他校の子ってことはない?」
「それはない。
校内でも一緒にいるのよく見たって言ってたし。」
校内でも………ん?
ってことは…
「王様くん、北一だったの?」
「?
そうだけど?
言わなかったっけ?」
「言わなかった!」
北一出身のバレー部ってことは、私も知っているかもしれない。
……でもコート上の王様なんて言われてた子は知らない。
「あ、あと女子バレー部だったって言ってた。」
「エ……。」
ちょっと待ってよ。
ってことは
「……あの子かな。」
1人だけ、思い当たる子がいた。
「知ってる人?」
また、蛍がニヤニヤし始めた。
「一応……。
女バレだった及川きょ…ファンの子。」
正直、私はあの子のこと好きじゃなかったケド…。
散々嫌がらせされたし。
蛍に写真見せてと言われ、出し惜しむ物でもないので卒業アルバムを見せた。
女子バレー部の集合写真で真ん中を陣取っていたその子。
「…この人?」
「そう。この子。」
蛍は首を傾げる。
「及川さんも王様も趣味悪くない?」
そう言ってまたマジマジと写真を見る。
その様子が面白くて、笑ってしまった。[ 17/41 ][*prev] [next#]
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