カワイイは作れる、らしい。
木曜日の夜、LINEが届いた。
LINEの送り主は二口。
『月島さんは何時に学校終わりますか?』
『3時半くらいに終わるよ。』
『じゃあ4時頃にこの前の場所で。』
了解…、と。
なんだか緊張してきた。
学校終わりだから何着てこうなんて考えることはないけれど。
あんまり化粧が派手にならないように気をつけないと…。
「今日の化粧濃くない?」
「エッ……。」
月曜日の朝、いつもの車両に乗っていた花巻に言われた。
「へ、変かな…?」
「?変じゃないよ?」
「ほんと?
よかった。」
「うん。かわいいヨ。」
「お世辞なんて言わなくていいよ。」
ちょっとだけ笑う。
「お世辞じゃないよ。
髪も今日は気合いはいってるネ。」
「あ、わかる?
いつもより30分早く起きてセットしたの。」
今日は髪の先をちょっと巻いてみた。
それを軽く編み込みして、軽く束ねるという髪型。
「髪型もイイね。
どこか行くの?」
「うん!
学校終わりにケーキバイキング行くんだ!」
「ケーキバイキング……?
すっげぇ羨ましいんだけど。
夜久達と?」
「ううん。二口。」
「…二口?
二口って伊達工の?」
「うん!
この前あの後ご飯行ったんだけど、その時にケーキバイキング行こうってことになったんだ。」
「ふーん。」
……あれ?
明らかに今テンションの下がった花巻。
「ご、ごめん花巻。」
「はぇ?」
「花巻もケーキバイキング行きたかったよね!
今度一緒に行こうね!」
私と同じで甘いもの大好きな花巻。
花巻もケーキバイキングずっと行きたがってたのに、私だけ行くのに浮かれてちょっと申し訳ない。
「……ブハッ!」
「…え……。」
花巻はお腹を抱えて笑い出した。
ヒィヒィ笑っている。
何がツボに入ったのか見当がつかない。
「お前はさ、本当かわいいよネ。」
「は…はい?」
まだ笑ってる花巻。
私としては全然どういうことかわからない。
「二口と付き合ってるの?」
「え!?
付き合っ…!?
付き合ってないよ!!」
なんでそんな話になるんだろう。
「だーよね。
二口と初めて話したの、つい最近でしょ?」
「そ、そうだよ!」
「でも今日デートするんデショ?」
「デー…ト……。」
そ、そうだった、この前夜久ちゃんにも言われた。
「ど、どうしよう…!」
「どうしようって…。
その為に粧し込んで来たんじゃないの?」
「そ、そうなんだけど…!」
また緊張してきた。
今日は二口に会うまで、ずっと緊張してそうだ。
私のそれとは裏腹に、花巻はニヤニヤと笑う。
「な、なに笑ってんの!」
「ん?
いーや。
二口もやるなーと思って。」
「?
どういうこと?」
「教えない。」
「なんでよ…。」
わけがわからない。
「 。」
?
「今何か言った?」
「んーん。
なんでもないよ。」
???
わけがわからないまま、学校付近の駅に着いた。
花巻と一緒に電車を降りる。
「あ、そういえばさ。」
「うん、何?」
横を歩く花巻と目を合わせる。
「デートのこと、及川には言わない方がいいヨ。」
ニヤッと笑う花巻。
「うん。
もちろんそのつもりだよ。」
そう言えば花巻は笑う。
「そうだよネ。
いつも思うけどサ、なんで月島って及川にはそんな手厳しいの?」
「………わかんない。」
言われてみればそうかもしれない。
なんでだろう。
「ごめん、変なこと聞いて。」
「ううん。大丈夫。」
「……俺にもさ、」
「うん?」
「ワンチャンあるかな?」
電車が、ホームを歩く私達の横を通り抜ける。
ワンチャン?
「何の?」
「なんでもないヨ。」
??
改札を出れば、及川と岩泉がいた。
「うわ!
灯ちゃんどうしたの!
今日すごいかわいいね!!」
「あ、ありがとう…。」
今日の花巻は何かいつもと違う感じがした。
ケド………気の所為かな?[ 12/41 ][*prev] [next#]
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