2015/01/03 23:21

小さくたって男の子



「渡っちー!
ちょっと来てー!」


部活の休憩中、及川さんに呼ばれた。
嫌な予感しかしない。
でもだからって無視するわけにもいかず、返事をしてそちらへ向かった。

「なんですか?」

そこには及川さんの他に花巻さんと月島さん。
花巻さんにちょいちょいと手招きされる。


「ちょっと月島と背中合わせで立ってみてよ。」


「………。」

なるほど、展開が読めた。

「渡ごめんね。」

楽しそうな及川さんと花巻さん。
そして対照的に申し訳なさそうな月島さん。

「いえ、大丈夫っス。
失礼しますね。」

花巻さんの言う通り、背中合わせで立つ。


「うーん。
ちょっと月島の方が高いかな?」


「そうだねぇ。」


及川さんも花巻さんも月島さんに嫌われてしまえ。
そんなことを思い、月島さんを見ればちょっと悲しそうだった。

「月島さん。
なんでこんなことになったんですか?」

「…わかんない。」

「そうですか。
……すみません、ちょっと失礼します。」

月島さんを背中から抱えるように腕を回す。
月島さんを含めて3人とも意味がわからないという顔をしたが、俺が月島さんの膝裏に腕を回したところで及川さん達は気付いたらしい。
そして月島さんも。

「きゃ…!」

小さな悲鳴と同時に俺の肩にしがみつく。

そう、今俺は月島さんをお姫様抱っこしているわけだ。


「ちょっと渡っち!?」

及川さんも花巻さんも慌ててる。
俺なりの仕返しは成功したみたいだ。
…それにしても

「月島さん軽いですね。」

「そ、そうかな?」

「はい。」

本当にすごく軽かった。
そして月島さん越しに見える及川さんと花巻さん。


「渡っちーーー!!!!」


「及川うるせぇぞ!!!!」



今日も青葉城西高校男子バレー部は平和です。

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