2015年4月
2015/05/01 19:59


月の蛍光灯×花巻



「桜が綺麗!
花巻の頭みたいだね!」

「………それ褒めてる?」

「え?褒めてるよ?」

「……そっか。」

隣を歩く月島は、もうすぐ鼻歌を歌い出すんじゃないかってくらいご機嫌だ。

「あ、桜餅売ってる!」

月島が指差した先には和菓子屋。
店頭では若くて綺麗な店員さんが試食用の桜餅を持っている。

「ほんとだ。」

「美味しそう…。」

これからスイーツの食べ放題に行くって言うのに桜餅に目をキラキラさせる月島。
思わず笑いそうになった。

「買う?」

「………うーん…。」

意外。
いつもならすぐに「食べる!」って答えるのに。

「どうした?」

「なにが?」

「いつもならすぐ食うって言うじゃん?」

「……そんなことないし。」


月島はムッとして口を尖らせる。
…なんだこの可愛い行為は。
その上薄ピンクのグロスが塗られた唇が強調されて、ドキッとさせられるから質が悪い。

「もしかしたら食べ放題に桜餅あるかもしれないし。」

「そうだネ。」

結局何も買わず、和菓子屋を通り越した。

「それにああいうのってさ、やっぱりお花見しながら食べたいよね。」


「…じゃあ一緒にするか、花見。」


俺がそう言えば、月島はうんと頷いた。


「うん!
みんなでお花見しよう!」


ニコニコ楽しそうに笑う月島。
対して俺は思わず苦笑いしそうになった。
『みんなで』か。



俺が言ったのとはちょっと違うけど


ま、


いいか




―――――――――――――――――






「お花見、矢巾と渡も呼ぼうね。」

「そうだな。」

お店での待ち時間、月島は楽しそうにお花見のことを話す。

「いつがいいかな。
あ、部活終わった後にやろっか?」

「監督とコーチに話せば色々手伝ってくれそうだな。」

「特にコーチがね!」

あははと笑う月島。


今だけは、俺が独り占め。




prev | next