はちみつ
『名字くん、放課後理科実験室に来るように』
昼休み、理科のじいさんに放送で呼び出された。
「なまえ、何かしたの?」
佐藤がパンをもりもり食べながら聞いてきた。
「何もしてないよー。ただじいさんの前でさゆりちゃんといちゃついてただけ」
田中くん最近冷たいから、ちょっとした浮気心だったんだけど…バチが当たったのかなあ〜と呟きながら、ポッキーをポリポリ食べていると、
「なまえ、学校帰りに俺の家に寄らない?」
猫背の平介がいつもより猫背にしながら、私のポッキーを一本奪った。
「良いの?!」
「あっくんも来るよ」
「行く!」
最近秋くんに会ってないから凄く恋しかったんだ。私は新たに出来た予定に心踊らせた。
「でもなまえ、先生に放課後呼び出されているよね」
「ちっ」
佐藤の言葉に現実に引き戻された私は、忌々しいと舌打ちをした。
仕方ない、逃げるか。
私はそう決心した。しかし、あのじいさんはずる賢い。そう簡単には抜け出せない。裏門から抜け出そうか…いや、裏をかいて正門から抜け出そうか。
いろいろ思案していると、いつの間にか放課後になっていた。
結局私はプランA、正門から抜け出すを実行した。
(あ、なまえが先生に捕まった)
世の中ははちみつのように甘くはない
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