視線
彼はいつもガラスを見て口角を上げている。
ほら、今日も。
街を通れば、いつも反対車線の方にいる彼。立ち止まったと思ったら、ガラスを見て笑みを浮かべている。少し気持ちが悪い。だけど、自然と彼を目でおってしまう。
彼は一体何を見ているのだろうか?
もしかしたら、ガラスに映る自分に見とれているのかもしれない。もしくは、ガラスの向こうにいる人間を観察しているか。
私は、此方に背を向ける彼を見て、それからガラスに映る彼を見た。一瞬目が合った気がしたが、きっと気のせいだろう。
(彼は今日も、ガラス越しから彼女を見る)
交わらない視線
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