3センチ
(あぁ、良い匂いがする…)
美味そうな匂いで徐々に頭が覚醒していく。ゆっくりと体を起こせば、ずり落ちる毛布。どうやら寝室で寝かされていたみたいだ。痛む頭を押さえながら、眠りに落ちる前の事を思い出そうと唸っていたら、
「あ、銀ちゃん起きたアルか?」
割烹着姿の神楽が居間からひょっこり現れた。
「なまえー、新八ー、銀ちゃんが目を覚ましたアル」
神楽は台所に向かって声を上げた。なまえが来ているのかと体が思わず反応して立ち上がろうとしたが、頭がふらついて上手く立ち上がれない。
「銀さん!立ち上がっちゃ駄目ですよ!熱出てんだから」
腰に手をあて怒る新八も、何故か割烹着を着ている。
「新八くーん、神楽ちゃーん、お鍋見てて貰えないー?」
台所の方でなまえの声が聞こえた。新八と神楽は、はーいと返事をして台所へ向かい、代わりになまえが現れた。
「大丈夫?」
心配そうな表情を浮かべるなまえに、あぁと頷き頭をがしがしとかく。
「新八くんから連絡が入った時はビックリしたわよ。銀時が倒れたって聞いて」
ぶっ倒れちまったのかと他人事のように考えていたら、いつの間にか側に座っているなまえに驚いた。
そして、俺の前髪をかき上げると顔をどんどん近づけてきた。
「ちょ、オイ!何して…っ」
「んー、まだ熱があるみたいね…」
ぴったりと引っ付いている額と額。間近過ぎるなまえの顔。
あぁ、やべぇ…頭がぐらぐらしてき…た…。
「銀時?!」
俺は卒倒した。
鼻と鼻が触れ合うまで
あと3センチ
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