甘噛み
大人になった夏目と夫婦になったら〜設定
「貴志さん、忘れ物」
玄関を出ようとする彼を引き留める。何?と振り返った彼の姿は、いつ何度見ても惚れ惚れする。
すらっとした細身で綺麗にスーツを着こなし、さらさらの色素の薄い髪色が彼を引き立てさせ、そして、
「なまえ?」
この甘い声で沢山の女性を魅了する。
彼は私にとって自慢の旦那様である。
「なまえどうしたんだ?さっきからぼーっとして」
「あ、ううん。気にしないで!それよりこれ」
紺色の布で包まれたお弁当を手渡す。貴志さんはそれを受け取ると、いつもすまないなと柔らかく微笑んだ。
「同僚がいつも羨ましいがるんだ。
愛妻弁当で羨ましいって」
「もう…、」
優しい顔つきで、そう言うもんだから私も照れてしまう。そんな様子の私を見て貴志さんは微笑み、腕時計を見た。
「そろそろ時間だ。…じゃあ、行って来ます」
「行ってらっしゃい」
(今日も私は、)
甘い愛を噛みしめる
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