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36℃


彼の声は苦手だ。

全身に鉛が落ちてくるような、良くわからない感覚が私を襲う。


「大丈夫ですか?」

「っ、」

彼の隻眼の瞳も苦手だ。

こうやって、私の目を捉えて離さない。


「顔が少し赤いみたいですけど、風邪ですか?」

彼の手も苦手だ。

少し冷たい手が私に触れる度、心臓が跳ね上がる。


「熱はないみたいですね」

彼は、そう微笑むとゆっくりと私の額から手を退いた。

でも、彼のせいで酔いが回ったように朦朧としている私の頭は、私の意思とは反対に彼の手を掴んだ。


「あっ、え…、」

私は、何をしているの!

心の中でヒステリックを起こしながら、顔はどんどん熱を帯びていく。

「ご、ごめんなさい!」

漸く覚醒した私の頭の細胞は、ぱっと彼から手を離すよう脊椎、神経を通して私の体に命令を下した。

でも、その離した手は彼によって捕らえられ、そして私の指と自分の指を絡めさせると、彼は私を引き寄せた。

その行動にぞくんと体を震わせながら、彼の隻眼の瞳を見つめる。

「貴女は、本当に…」

そう耳元で囁くと、私の唇に接吻をした。


これを恋だと言わないで

体は36℃平熱 心は100℃高熱

(愛しくて、可愛い)
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