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めまい


私に新しい助手が出来た。但し、“仮”だけど。

「じゃあ、あの妖怪に話つけてきますね!」

「あ、うん。気を付けてね」

張り切った様子で、おらおらと田舎のヤンキーくさい動作で妖怪につっかかって行った彼女に小さくため息をつく。

「瓜姫、彼女の側に付いていてあげて」

「御意」

「…主様、良いのですか?あんな者を傘下に置いて」

柊の言葉に苦笑いを浮かべながら、未だ妖怪相手にメンチを切っている彼女を少し遠くから眺めた。



先週、私の前に突然現れた彼女は、

「名取さんの助手にして下さい!」

と私に頭を下げてお願いしてきた。最初は、何の助手なのか分からなかったけど、チラチラと柊や笹後、瓜姫に目を向けていたので分かった。

あぁ、この子は“裏家業”の事を言っているのか、と。

そんなこんなで彼女を“仮”助手として迎え入れた。そして今日がそんな彼女の初めての仕事だ。
地主の相談で承った妖怪退治を彼女の初任務とした。妖怪に深く関わった事のない様子の彼女に、こっちの世界は彼女が思うほど甘くはないと実感させるためこの仕事を任せた。これに懲りて、助手になることを諦めて貰えると良いのだけれど。そんな事を思いながら、下がった眼鏡を人差し指で上げた。

「名取さーん!どうやら、この土地から退いてくれるみたいですよー」

「え?」

仲良く妖怪と肩を組んでいる彼女の言葉に目が点になった。一体何がどうなってそういう展開になったんだ。

「まさか、契約なんてしてないだろうね…」

「してませんよ!…ただ、七辻屋の饅頭を鱈腹食わせてやるという約束はしました」

だから買いに行きましょう!と笑う彼女に、私は頭がくらりとした。

「…ちなみにその饅頭代誰が出すんだい?」

「え!名取さん出してくれないんですか?」

「……ハァー…、」

何だか、胃が痛くなってきた。

めまいと胃痛

(あ、そうそう。あの妖怪に“お前はレイコに似ている”って言われました)
(レイコ?)
(誰なんでしょうね、その人)
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