膝枕
廃墟の屋敷の縁側で、まだ小さい蕾のままの梅の花を眺める。今年の奥州の冬は寒かったせいで少し芽吹くのが遅い。
「あら、またいらしたんですね」
透き通る声の主にちらりと目を向ける。
女は一度会釈して、カランカランとげたの音を鳴らしながら俺の側まで歩み寄って来た。
「まだ、咲きませんね」
女は人一人分離れた場所に座ると、梅の木を見上げた。俺はいつものように女の膝に頭を置き、そして女の頬に手をあてる。女はこちらを見てふふっと微笑むと、また梅の木に視線を戻した。
「奥州の春は近いですね」
「あぁ…」
俺はこの温な小春日和に目を閉じた。
膝枕は、母の温もり
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