内緒
実はね、このバレンタインのチョコレートにはハバネ…すっごーーく辛いチョコレートが混じってるの。でね、この辛いチョコレートを平介 鈴木 佐藤の内の誰がこれを当てるか悪戯しようと思うの。だからこの事は三人だけの秘密ね!
秋くんと虎太郎に甘いお菓子を渡して、こそっと教えた。だって、前もって知らせずにやったら一生私の作ったお菓子を食べてくれなさそうだもん。私のお菓子を食べたら様子が可笑しくなるって。それは絶対に嫌だから前もって言っておく事にした。
「なまえさっきから何こそこそ喋ってんの?」
「おおうっ?!…い、いや何も」
佐藤がいきなり背後で囁くものだから、びっくりしてしまった。振り返れば平介と鈴木が不思議そうな顔で此方を見ている。私は気を取り直してゴホンっと一つ咳き込むと、彼ら三人に向き直りラッピングしたチョコレートを差し出した。
「これ作ってきたから食べて!」
まずは、平介が私のチョコレートに手を伸ばし、水色のラッピングを掴んだ。
水色のラッピングは、残念ながら安全なチョコレートが入ったもの。心の中で残念がりながらも、味わって食べてねと愛想笑いを浮かべた。ちなみに、辛いチョコが入ったラッピングは赤色だ。
今度は佐藤がチョコレートに手を伸ばしてきた。その手は赤色と黄色のラッピングを行き来していて、どうやら迷っているようだ。
ていうか、一つ気になる事がある。佐藤の手が赤色のラッピングに行く度、虎太郎が、
「あっ!」
と声を上げる。
それを怪しく思った佐藤がチラチラと此方に目を向けてくる。不味い!バレる!と内心焦りながら早く選んでよと佐藤を急かす。
「なあ、その赤色のラッピングのチョコレート、やけに赤くないか?」
鈴木がいらない事に気がついた。
「気のせいじゃない?」
「なら、毒味しろ」
「無理!というかコレ君たちのために作ってきたんだよ。何で自分の作ったものを自分で食べなきゃならんのだ」
と目線を大きく反らして言う。
「…じゃあ俺が赤色のやつを食べる。ただし、安全が確認できたらだ」
そう言って私から赤色のラッピングを奪うと、秋くんと虎太郎に近づき少し赤みがかったチョコレートを取り出すと、無言で二人にそれを差し出した。
秋くんと虎太郎は、あわあわした顔で此方に助けを求める目を向けてくる。私はすかさず鈴木と二人の間に割り込み、二人を守るように背中に回した。
「や、やめろ鈴木!!無垢な二人に罪はない!」
そう言うと、鈴木はその言葉を待ってましたと言わんばかりに口角を上げ、食えと私にそのチョコレートを差し出してきた。
折角作ったものを捨てるのは勿体ないし、第一食べ物を粗末に出来ない私は渋々その辛いチョコレートに手を伸ばした。
(バカ正直と言って下さい!)
「かっらァァァァ!!」
内緒の話はこうしてバレる
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