何処なんだろう、此処は。
どうしてもアイスが欲しくなってアイスを買いにコンビニへ向かったその帰り道、コンビニ袋を手提げながら帰路を歩いていたら何故か見知らぬ道に出てしまい、ただ今半泣き状態。知らない所だし、しかも人通りも少なく外灯しかない。頼りの携帯も家に忘れてきてしまい、親にも連絡が出来ないという最悪なパターン。いい年こいて泣きそうだ。でも、足を止めてても何の解決にもならない。私は足を進めた。
「何泣きそうになってんだい」
突然の人の声にびっくりして辺りを見回したが誰もいない。
「もう、やだあ」
誰もいないのに人の声を聞いた事により恐怖で涙腺が崩壊。地べたにへたれこむように座りわんわん泣いた。
「泣くんじゃねぇ」
トンと目の前に現れた着物姿の男の人が私の涙をぬぐう。
綺麗な顔に赤い瞳、そして白と黒の横に伸びた長い髪。
「個性的な髪型ですね…」
「言うじゃねぇか」
しゃっくりをあげながら、さっきどこに居たんですか?と尋ねれば、電信柱の上という可笑しな返事が返ってきた。
「バカにしてるんですか?」
「本当だぜ。何なら…」
と言って、彼はいきなり私の脇に腕を通し抱き上げると軽くジャンプした。そしたらいつの間にか電信柱の上にいて、下に目を向ければ地面が遠く感じられた。
「なっ、落ちる!落ちる!」
恥小なり恐怖という不等式が出来上がっている私は、慌てて彼の首にしがみつく。そんな私に彼は、大丈夫だと笑いながら空中を移動し始めた。
「貴方、人間なの?!」
「いや、人間とぬらりひょんのクォーターだ」
そんな彼の言葉も聞かずに、ひぇー!と情けない声を上げた。もう涙なんか乾いて頬がかぴかぴだ。
「着いたぜ」
漸く地面に下ろされた私は、安心してほっとため息をつくと、ある事に気がついた。
「家についてる…」
見慣れた家の前に立っている事に気づき、何で私の家を知っているのと彼に尋ねると近所だからなと返事が返ってきた。
「私、貴方の事知りませんけど」
「これは夜の姿だからな」
夜…?
「さあ、中に入りな」
とんっと背中を押され、ちょっ!と振り返れば彼はもう居なかった。
(名前聞いてないや…)