「いっ、」

「どうしたの?なまえ。もしかして突き指した?」

「うーん…多分大丈夫!!」

「ホントに?」

「見せてみるのだよ」

「緑間くん!?」

「いいから早く見せるのだよ」

突然、気配もなく現れた緑間くんはその長身な背を少しかがめて綺麗にテーピングされた左手で私の突き指した右手をそっと掴んだ。突き指した薬指は少し赤く腫れ上がっていて、第二関節が少し熱い。緑間くんは、冷やした方がいいな…と呟くと、私の手首を掴み歩き出した。そんな彼の一連の行動に唖然としながら、何処行くの?と尋ねれば、教官室だ。だが、まずは先生に報告すると言って緑間くんは近くにいた先生の所まで私の手を引き、事情を説明し始めた。

……正直、皆がいる前で異性に手を引かれるのはとても恥ずかしい。でも緑間くんはそんな事を全く気にしていない様子で未だに私の手首を掴んでいる。
…離してもらえないだろうか?と言いたいが…言えない。緑間くんは身長が高いせいか威圧感があるし、少し変ったところがあるらしいから少々話しかけ辛い。それに、私のために動いてくれているのだから文句を言いにくい。

言いたいことも言えない情けない自分に飽きれながらも、握られた手をじっと見詰めた。視線というかテレパシーというか、兎に角私の気持ちを早く察してくれと願いながら握られた手を見詰めていると、緑間くんは気付いたのか此方を見た。(正確には、彼の方が何十センチも背が高いので見下ろされる形だ)
やっと手を離してくれると期待したけど、緑間くんは淡々とした様子で、行くぞと言うと、また手を引いた。
そのまま教官室に入ると、彼は漸く手を離してくれた。離すタイミングは随分前に逃してしまっていたが、息苦しさから解放された私はそこでホッとため息をつき、先生も来るのかと思い後ろを振り返った。しかし、先生は来なかった。てっきり先生が処置してくれると思っていたのに、先生は生徒と一緒に試合の準備をしていた。疑問に思い、あの…先生は?と緑間くんに尋ねると、緑間くんは

「突き指ごときで先生の手を煩わせる必要はないのだよ」

と、テーピングの用意をしながらそう言った。その言葉になんだか突き指した自分が悪く思えてきたけれど、取り敢えず緑間くんの前に座り、突き指した手を差し出した。緑間くんは患部に湿布を巻くと手慣れた手つきでテーピングを施した。私はそれをただ眺めるだけだった。



緑間くんは、これで良いだろうと言うと湿布やテーピングのゴミの後片付けを始めた。何から何までやってくれた緑間くんに申し訳なさと感謝の気持ちでいっぱいになりながら、薬指に綺麗に巻かれた白いテープに視線を向けた。
流石バスケ部。とても綺麗で丁寧にテーピングされていている。手慣れてる感が半端ない。
なんて思いつつ、後片付けをしてくれている緑間くんの大きな背中に視線を向けた。腰細いなあとか足細いし長いなあ…とか要らぬことまで考えていると、緑間くんが突然此方を振り返りそっと私の右手を掴んだ。そしてそのまま手を、合わせるように重ねると指を絡ませてきた。

そんな彼の突然の行動に、何をしているのかという驚きと、恥ずかしさで頭がパンクしそうになりながらも、みっ緑間くん?と声をかけた。だけど彼は私の言葉を無視し、じっと私の目を見てきた。私はすぐに目を反らし、かあっと頬を熱くさせながら視線を泳がせた。


「名字」


名前を呼ばれた。少々狼狽えながら視線を彼の唇までもって行き、なっ何ですか?と(思わず敬語で)尋ねると、心地良い低音ボイスで、意識してくれたか?と彼の綺麗な唇がそう動いた。

「え、?」

その言葉に思わずポカンとなって思わず彼と視線を交わらせてしまった。案外近くにあった緑間くんの整った顔に喫驚しつつ、阿呆面でもう一度、え…?と聞き返した。けれど徐々に頭の整理がつき始めた私の脳は、その言葉の意味を理解し、身体は湯気が出るんじゃないかってぐらいに熱が篭った。多分、今の私の顔は昔話に出てくる赤鬼並みに真っ赤だと思う。

緑間くんはそんな私の頬を指の腹で撫で、今よりももっと顔を近付けてきた………。


この気持ちを15文字以内で
(彼のせいで頭がパンクしそうです)


「み、みどりまく「真ちゃん!!そろそろ試合始ま…る……って、え…何これ何の状況?」

「チッ、少しは空気を読むのだよ」


×
初緑間夢。黒バス一回か二回ぐらいしか見ていないのに出来心で作ってしまいました(笑)うーん、いまいち緑間の言葉使いが分からない。
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