ふと、目が覚めた。

ひゅーひゅーと風の吹き抜ける音と浮遊感に眉を顰め……ん?浮遊感?


「ちょ、や、何コレ、この浮遊か……ぎやああああああああああああああああ!!」

高度何千メートルだろうか。とんでもない高さから落ちている自分自身とその恐怖に腹のそこから叫び、クルクルと回る。ちなみに言うと、回りたくて回ってるわけじゃないからね。体が安定しないのだ。クルクルと回る景色に吐き気を伴いながら雲から度々覗く光景に瞠目した。


な、なななななな何で英国の有名な時計塔が見え、…いや気のせいだろう。

てかそもそも夢なんだから慌てる必要はないんだ。そう、これはちょおおおおおおリアルな夢。うん、絶対そうだ。よし、一刻も早く目覚めよう。

という現実逃避を脳内で繰り広げたが駄目だった。どう考えてもこれは夢じゃない。視覚・聴覚・触覚が現実だと証明している。

しかし、これが本当に現実なら私は確実死ぬ。運良く何かに引っかかったりすれば命は助かるかもしれないが、このまま落下すれば私の体は原型をとどめることはできないだろう。

そんな事を冷静に考えていたら、いつの間にか体はどんどん地面に近付いていた。
私が落ちて行く先は、整備されたような草原のようで、少し離れた所には薔薇園が見えた。何処かの金持ちの家か…!と思った瞬間、落ちゆく自分の体と比例するようにみるみる顔が青ざめていった。
…そう、私が落ちていく所に燕尾服を着た人が何やら作業をしていたのだ。あわよくば抱きとめて欲しいが、時速何百キロで落ちていってる私を抱きとめるなんて不可能だ。例えるなら鉄が自分の上に落下してくるのと同じ。
私は堪らず

「危ないからあああッ!!」

と声が枯れるほど叫んだ。……ちょっと待て、私。咄嗟に叫ぶ言葉が、危ないからッ!て何だそれ!他に退いて!とかきゃあっとかあるじゃん!何してんの!
なんて自虐していたら、私に気が付いた燕尾服の人が此方を見上げて両手を広げ出した。


馬鹿だろ!!!!!あいつバカだろ!!!!んな事したら死ぬって!!!いや、そのまま地面と接触して死ぬのは自分だけれども!人を巻き込んで死ぬくらいなら自分だけ死んだ方がましだ!だから退け!!


そんな私の必死な気持ちも知らずに燕尾服の人は、私が落ちる場所に合わせるように動き、抱きとめる準備をする。


私は呆れて、抗う事を諦めた。


ちゃくちゃくと縮まる燕尾服の人との距離、およそ1km、…50m、12m……8m。

死を覚悟した私は最期の最期で吠えた。


「なまえ逝っきまああああああ、…え?」

「大丈夫ですか?」

「あ、はい」


何故か見事に燕尾服の人に抱きとめられていた。
しかも私を抱き留めてくれた燕尾服の人は、あの……あの……、

空っぽでした
(悪魔で執事いいいいいいい!!)

×
こういうトリップの最初の話を書くのが好き過ぎて困る…。だから、色んな話が中途半端になるんだ!!泣
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