「鬼灯様ー!どこ行ったんですかー?鬼灯様ー!」

執務を放り出して消えてしまうなんて珍しい。管轄内で何かあったのだろうか?

上司の名を呼び続けながら官庁内を捜し回る。しかし、いくら探しても見つからない。
そろそろ面倒臭…げほん。埒が明かないので捜すのを諦めようとしたその時、くいくいと誰かに着物を引っ張られた。視線を下にやると黒髪の小さな子鬼がいて、此方を見上げていた。どこか鬼灯様に似ているところがあり、さては隠し子かな?なんて半分冗談、半分本気で考えていると、また着物を引かれた。私は仕方なく小鬼の視線くらいまで高さを合わすと、迷子?お母さんやお父さんは?と怖がらないように笑顔で尋ねた。すると、小鬼はあからさまに顔を歪め、何を言っているのです?と不服そうに返して来た。小鬼のくせに生意気だなと顔を引きつらせていると思いっきり頬の肉を引っ張られた。

「貴女は上司の顔すら忘れる程無能な部下だったんですか?」

「そ、その背筋が冷えるような言葉はまさか…!鬼灯様?!……んなわけないか」

「んなわけがあるんですよ。馬鹿なんですか?貴女は」

そ、そんな…バナナ…!鬼灯様がこんな小鬼になるなんて、あり得ない!某探偵ボウヤじゃあるまいに。しかしその背筋の冷えるような喋り方は明らかに鬼灯様のもの。なら、どうやってそんな小さくなってしまったんだろうか。

「…あとで万年発情期にこれ渡しといて下さい」

そう言って手渡されたのは、釘が隙間なく埋め込まれた藁人形(って呼べるのかこれ。釘人形って呼んだほうが…)を渡された。
これではっきり分かった。白澤様のせいでこんな事になってしまったんだなと。手渡された人形の重さと比例するように私の肝を冷えていった。

はぁ…と大きなため息をつき、呪われた藁人形を片手に小さな鬼灯様を見つめると、私はふとあることを思いついた。そして実行に移った。


「……何をしているのです?」

「え、分からないんですか?抱っくぉほ!」

「そんなの見なくとも分かります。何故貴女は私を抱き上げているのです?」

「私、小鬼が苦手なんですけどね、なんか鬼灯様が可愛く見えちゃって。つい」

てへっと舌を出したら思いっきり殴られた。女にすることじゃないよ!!しかもグウって!何でこんな奴がモテるのやら…。世界の…じゃなかった地獄の七不思議だよ。うん。

「でもこのままじゃ色々面倒だと思うんで、兎に角白澤様に何とかして貰いに行きましょう。そうじゃないと仕事が溜まりに溜まっちゃいます。それまではこのままで!」

「いいでしょう。今回だけは貴女に従います。ですが、この状態は流石に譲れ……いや、このままで行きましょう」

「?、ではレッツラゴー!!」



(あ、そうだ!もし元の体に戻れなかったら一緒にお風呂入りましょうね!むふふふふ)

(………)

丁重にお断りします
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