※幼児設定



「しゅうにー!なつめおにーちゃんからおまんじゅうもらった!」

私の元に駆け寄ってきた小さななまえの手に乗せられた大きな饅頭。良かったなと頭を撫でてやると、なまえは嬉しそうに頬を染め、ふにゃりと破顔した。
嗚呼、可愛すぎる!
そんな可愛いなまえに頬を緩めていたら、

「おや、名取の娘ですか?」

「的場…!」

背後から声を掛けられ驚いて振り向くと、そこにはあの的場家当主が立っており、興味深そうになまえを見ていた。私は咄嗟になまえを己の背後に隠すと、的場を睨んだ。

「別に取って食おうというわけではないんですが…。まあでも、貴方の娘なのですからとても興味深いですけどね」

「この子は親戚の子だ。私の娘じゃない」

「そうだよ!しゅうにーはなまえのおにーちゃんだよ!」

「兄、ですか?」

「うん!おじいちゃんのいとこのこだから!」

私の背中からひょっこり顔を出したなまえは、太陽みたいな笑顔で的場に笑いかけた。そんななまえを的場は無言で見下ろすと、今度はなまえと同じ高さまでしゃがみ、名前は?と尋ねた。私は再びなまえを背に隠し、代わって名を教えたが、的場は此方を向いて微笑み

「貴方に聞いていません」

と言ってまたなまえに向き直った。その態度に正直イラっときたが、なまえは幼く無垢なせいで構わずあの的場の前に歩み寄り、なまえだよ!と言って笑った。

「おにーさんのおなまえは?」

「的場静司です」

「まとばおにーちゃん?」

「ぶっ!」

思わず吹いてしまった。
こ、これはツボだ!祓屋の中で恐れられているあの的場がお兄ちゃん…。ぶはっ!
くくく、と肩を揺らしていると、的場はにこやかな笑みを浮かべ、此方を見ていた。確かに表向きはにこやかだが、黒い。黒いオーラが出ている。
私は不味い!と思い、居直すように咳を一つすると、なまえに帰るよと促した。なまえは素直に頷くと、

「ばいばい!まとばおにーちゃん!」

と言って小さな手で的場に手を振った。するとどうだろうか、的場までさようならと手を振った。その光景に私は唖然とした。
的場の意外な一面を見て動揺を隠せなかった私はなまえを抱き上げると、ダッシュでその場を離れた。

その時、聞こえた言葉は聞き間違いであったと願いたい。


妹に欲しいな


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ちょっと意外な的場を書いてみたくなり書いてみたら、結果がこれです。当主がちょっとロリ路線に…。
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