銀さんは“松山ケンジ”の呼び名をコロコロ変えます。ケ〇イチじゃないですよ、ケンジです(笑)
家に帰ってみればヤツが居た。我が家のテレビに顔を近づけ奇声をあげながら。
「ぐはっ!松山ケンジ格好良いー!!」
「…あのさ、何勝手に人ん家のテレビ使っちゃってんのかなァ?」
こめかみをピクピクさせながらヤツを見下ろすと、奴は
「あ、坂田さん!お帰りなさい!」
と俺を見るなり、ぱあっと嬉しそうな顔つきになった。これは不味いと本能的に感じた俺は守備体制に入りながらヤツを問い詰めた。
「いや、お帰りなさい!じゃなくてよー。どうやって家に入った?俺ァ、ちゃんと玄関の鍵を閉めたはずだが…って人の話聞いてる?!」
「あー…ごめんなさい。今良い所なんで、ちょっと」
テレビ画面に映る松山ケント?を食い入るように見ながら、ヤツはそう言った。それにイラッときた俺は、テレビに夢中になっているバカの首に腕をかけ軽く力をかけた。
「あぁ?俺に黙れってか?!」
「ちょ、首締まる!ギブギブ!!」
最初は手足をバタつかせながら抵抗していたヤツだが、突然動きを止め叫び出した。
「うわぁぁぁぁ!!何この状況!?坂田さんに後ろから抱きしめられてるゥゥゥアア!!」
気のせいか(いや、気のせいじゃねェな)ヤツの息が荒くなってきた。だんだんと身の危険を感じてきた俺は、ヤツから離れソファーに逃げた。普段なら追いかけてくるが、丁度松山ケンタがドアップになったので、またそっちに熱中し始めた。
きゃー!萌える!!とか何とか言っているヤツを尻目に、俺はテーブルの上に置いてあるチャンネルにゆっくりと手を伸ばした。
松山タロウが口を開き、愛の台詞を言おうとしたその時、
「愛し、」
プツンっと冷めた音が部屋に響いた。暫く放って置くと、突然ヤツの肩がわなわなと震え出した。
「な、ななな…何してくれるんですか!?坂田さん!!今かなり良い所だったんですよ!?どうしてくれるんですか!この気持ちィィ!!」
頭をかきウガァァァァァ!と叫ぶヤツに、俺はこう吐き捨てた。
「お前の気持ちなんざー知るかよ」Thanks:確かに恋だった