「…なまえ起きて」

「んあ?」

目を開けると、シェフが着るような服を着ている平介が私の目に映った。徐々に覚醒してきた頭と共に起き上がれば、周りは白一色。平介と私と私が寝ていたベッドが浮いて見える。

何処ここ?と思いながら、平介に向き合うと彼は私に手を差し出してきた。

「何ですか、これ」

「手ですよ。さあ手をとって」

言われた通り平介の手をとると、彼に引っ張られるまま別の部屋に移動した。



私たちが移動した部屋は、ロイアル風に部屋がアレンジされていて、目の前には美味しそうな沢山のお菓子が白いテーブルクロスの上に並べられていた。

「なまえの為にいっぱいお菓子を作ったんだ」

そう言って平介はテーブルのイスを引き、私に座ってと促してきた。お嬢様みたいだあと興奮しつつ彼が引いたイスに腰を下ろし、目の前の沢山のお菓子達に感動する。

向かいのテーブルではすでに佐藤がお菓子を口いっぱいに詰め込んでいて、佐藤も居たんだ!なんて思っていると、平介が私にナイフとフォークを差し出してきた。


「思う存分食べて下さいよ」

「良いの?」

そう聞けば平介はコクリと頷いた。私はやったー!と喜び、彼からナイフとフォーク受け取ると、るんるん気分で美味しそうなお菓子に向き合った。でもその瞬間、折角持ったナイフとフォークを落としてしまった。

だって皿に乗っていたのは美味しそうなお菓子達ではなく、


鈴木の顔だったから。


「ぎゃぁぁぁぁ!!」



「という夢を見ました!」

「見ました!じゃない!なんつー気持ち悪い夢見てんだ!」

「そんな事知らないよ!私だって見たくて見た訳じゃないんだよ!」

「まあまあ、二人共落ち着いて」

鈴木が顔を青くしながら怒ってきたから私も言い返したが、佐藤が宥めてきたので一先ず落ち着く。

「でもさ、佐藤が口いっぱいに詰め込んでいたって言ったけど、その口に突っ込んでいたものが鈴木だと思うと気持ち悪いよねえ」

平介がへにゃっと悪気のない笑顔を浮かべながら、言ってはいけない事を言った。

「…」

案の定、みるみる佐藤の顔が青くなっていき、彼はうっと言って口元を押さえる。

「佐藤ぉぉぉ!!」

私の本日の昼休みは、佐藤の介抱に終わった。