「名字、起きろ。寝るな」

「ん〜、オヤジィ寝かせてくれえ。おれは寝てーんだあ」

「誰がオヤジだ!!」

「ん…あ、先生かー」

「何の夢を見てたんだお前は!…罰として黒板に書かれている問題全部解いてこい!」

「し、しぬぅぅう!!無理解んない!」


…あのバカはバカ過ぎてため息すら出ない。
今みたいに先生に対してあんな態度はとるわ、お菓子にはすぐ食い付くわで本当に高校生か?と思う。

でもバカのくせして俺より頭が良い。つくづく神は不公平な事をするなと思う。まあ、神なんて信じてないが。


「ぶえっくしょい!!」

帰路を歩いているとなまえが突然豪快なくしゃみをした。風邪かな?とへらへらしながら鼻をズピーとすするなまえに仕方なくポケットティッシュを差し出した。

「気が利きますねぇ、鈴木にしちゃあ」

「一言多いぞ」

「あーあ、平介が風邪ひいてなくて佐藤に用事がなきゃあ鈴木と二人っきりで帰らずに済んだのに」

それはコッチの台詞だ。
平介の見舞い品(平介が大量に貯めている宿題のプリント)を届ける仕事がなかったら、コイツと二人っきりで帰らなくて済んだはずだ。

今日は運が悪い。


「…何だよ」

さっきからジーッとこちらを見るなまえの頭をぱしっと叩いた。

「いやねえ、女子達が噂していたのだよ。キミがカッコイイと」

理解出来ないとぼやくなまえに失礼だと感じながら、平介の家の前で歩みを止める。

インターホンに指を伸ばしボタンを押そうとしたとき、

「へーすっけくーん、元気かーい?」

突然なまえが大声で平介を呼び出し、俺はぎょっとした。

そんな様子を通行人はチラチラ物珍しそうに見てきたので俺はすぐさまヤツから離れ、他人のフリを始めた。

が、ヤツは空気が読めないのか、何で離れるのさあと近寄ろうとする。俺はさらに距離とり、離れた場所からなまえに冷たい視線を送りながら、

「近寄るな、アホが移る」

と言ってやった。
案の定、ショックを受けるなまえ。そこへ、タイミング良くマスクをした平介が家から出てきた。

「ゴホッ、なまえ近所迷惑くらい考えてよ…ってアレ?なまえが固まってる」