「おはよう!なまえ」

俺は前を歩くなまえに元気良くあいさつすると、

「…あ゛?何だ佐藤か、はよ」

どすの効いた顔と返事が返ってきて思わず泣きそうになった。しかも、何だ佐藤かって…。

「ど、どうしたの?いつにも増して不機嫌そうだけど」

「田中(愛犬)のヤローが、俺が大事に取っておいた平介のクッキーを食いやがったんだよ。ぺっ」

……ものっすごく荒れているんですけど。しかも唾を吐いたよ、この子!

「おはよう、なまえ 佐藤」

そんな状態の中、いつも通りのんきに現れた平介に、さっきまで荒れていたなまえは目と鼻から水をぶわあっと出して平介に飛び付いた。

「へ、へーずげぇぇぇぇ!」

「ちょ、汚い。どうしたの、この子?」

なまえを離すように肩を押しながら尋ねてきた平介に苦笑いを浮かべながら事情を説明すると、平介はそんな事で…と少し呆れたような表情を浮かべ、教科書等の類いが入ってなさそうな鞄をごそごそとあさるとポッキーを出した。

「はい、これあげるから泣かない」

「い゛い゛の゛?」

なまえはずぴずぴと鼻を啜りながら平介からポッキーを受けとると、コンマ一秒の速さで袋を開け何本か束にしてポッキーをボリボリと食べ始めた。完全に餌付けされてるよ!

「そういえば佐藤、こた元気?」

斜めから此方を見上げ鼻声ながらもそう尋ねてきたなまえに、今日暇だろうし遊ぶ?と聞いてみれば、

「うん!」

と、彼女は元気よく頷いた。そんな様子を見て子どもみたいだなと思わず笑ってしまった。

話の内容を聞いていた平介も、あっくんも良い?と提案してきたので、いいともー!となまえと一緒にしょうもない返事を返したら、

「なまえに佐藤、朝からさむいぞ」

と鈴木の冷たいツッコミが入った。

「おはよう、パ〇イヤ鈴木」

「あぁ?」

少し遅れて登場した鈴木に早速ケンカ腰になるなまえに対して、今日も平和だなーと平介と一緒に目を細めた。